野村佐紀子 写真展「Lirio」

野村 佐紀子
2026/01/29 ~ 2026/03/02
book obscura
2024年スペイン・グラナダで撮影され、翌年同・マドリッドのFundación MAPFRE で開催された大規模回顧展「Sakiko Nomura: Tender is the Night」(2025年2月6日~5月11日)で初公開された作品と、未発表作品によって構成された野村佐紀子さんの最新刊『Lirio』の発売を記念して写真作品を26点展示する写真展を開催致します。皆様お誘い合わせの上、是非ご高覧下さいませ。
人間は経験と視野の広さで彩られます。時間と感情を一気に奪うような出来事が、なんの予定もなくいきなり対峙しなければならない瞬間は誰にだって起こり得ます。それは、人の一生を永久に立ち止まらせることにもなるでしょう。経験したことがない人ならば、どう立ち上がって良いのか、どう歩き出して良いのかなんて皆目検討もつかないものです。
駆け出したくなる歓びも、悲しみを越えた絶望も、立ちすくんでしまう恐怖も経験しているからこそ、その人の豊かさに変わって写真になって行くのでしょう。
人を被写体にする「ポートレイト」は近代でも親しまれていますが、被写体にしている「人」は、喜怒哀楽という4つの感情だけでは形づくれないものです。清潔で輝いて魅力ある部分だけではなく、羞恥も煩悩もドロドロとした部分もあります。
人間の姿や形は美しく、顎から首を流したデコルテ、胸から腰を通った腰の曲線美やエクボが出るような微笑みは絵画の時代からこの世に有り余るほど誕生してきました。
「人間」という被写体1つ、どこまで認識しているのか、どこまで思考をしているのか。
そしてそれらを、どこまでをすくい取り、どこまで見せるのかは写真家次第ではありますが、写真は世界に対して、社会に対して、写真に対して、それ以外の様々な何かに対して、何を思い、何を憂い、どこを通って今ここにいるのかが写ってしまうと私は思います。
経験とは本当に恐ろしいものです。
野村佐紀子さんの写真を見ていると、人の姿や形以上の何かが写っているように思えて仕方がありません。
生涯を永久に立ち止まらせるようなことがあっても、立ち止まらずその先の経験に向かった野村さんだからこそなのだと思います。同時に、無意識に綺麗で希望に溢れた美しいものたちだけを見ようとしてしまう自分にも気付かされます。自分の知らない美しさに対応出来てない自分と対面するのです。
目を閉じるのも、経験や感情に蓋をするのも簡単ですが、野村佐紀子さんはありとあらゆる人間の内側全てと対峙し、どのような俗物でも包みこんで一定に見続けられる「写真」に変えてきます。
写真にしたからこそ、ある程度の距離を図れる瞬間でもあり、内側にも外側にも迎える瞬間であるとも言えるでしょう。
なんでもかんでも「#(ハッシュタグ)」を付けるように、無意識にカテゴライズしてしまうなかで、剥き出しの「人間」そのものを捉える野村さんに「写真」にしてもらえたらそれは幸せだろうなと思います。
それは、花を贈るようなことなのかもしれません。
形も色も美しい「花」は、1 つの種が芽吹いて水と光で命を繋ぎ大輪の花になった「命」の贈りものです。林檎や蜜柑のような食べ物のように贈り物を受け取った人の命に直接変わるようなものではないかもしれませんが、そこはかとなくずっと覚えているようなものかもしれません。
「人」を「命」をどう翻訳出来るのか。写真はやはり面白過ぎます。
本展示は野村佐紀子さんから贈られたお花なのかもしれません。そのお花を是非受け取りに、そしてそれらを経験に変えてみて下さい。
bookobscura 黒﨑由衣
■開催情報
野村佐紀子 写真展「Lirio」
会 期:2026年1月29日(木)- 2026年3月2日(月)
12:00-19:00
定休日:火曜日・水曜日
会 場:book obscura(東京都)
■作家プロフィール
野村佐紀子 Sakiko Nomura
1967 年山口県下関生まれ
1990 年九州産業大学芸術学部写真学科卒業
1991 年荒木経惟に師事
1993 年より国内外写真展、写真集多数。
おもな写真集に、「裸ノ時間(平凡社)」「夜間飛行(リトルモア)」「黒闇(Akio Nagasawa
Publishing)「nude/ a room / flowers(bookshop M Co., Ltd.)」「愛について(ASAMI OKADA
PUBLISHING)」「majestic(BCC)」「春の運命(Akio Nagasawa Publishing)」などがある。
■書籍概要
本書は、2024年スペイン・グラナダで撮影され、翌年同・マドリッドの Fundación MAPFRE で開催された大規模回顧展「Sakiko Nomura: Tender is the Night」(2025年2月6日~5月11日)で初公開された作品と、未発表作品によって構成されています。この展覧会は大きな反響を呼び、2026年3月からスペイン各地を巡回、その後ヨーロッパ各地へと巡回予定で、国際的に野村佐紀子の存在をさらに広げる契機となっています。
スペイン語のタイトル「Lirio(ユリ/アイリス) 」は、死者への供花であり、生者と死者を結ぶ象徴的な存在を意味しています。本作ではその象徴性を軸に、失われたものと残されたもの─そのあいだに息づく親密な記憶を、繊細に映し出しています。
編集・造本設計・出版を手掛けたのは、日本を代表する造本家・町口覚。表紙には、麻と紙を撚り合わせて織り上げたオリジナルの麻の紙布(しふ)を用い、その独特な質感に〝闇に刻まれた傷が、夜明けへと導く。〟という造本コンセプトを重ねるように、ふたつのデザイン(SCAR Edition /DAWN Edition)を制作しました。タイトルロゴには、スペインの詩人フェデリコ・ガルシア・ロルカの手書き(筆跡)に基づいて設計されたフォント「Federico」を採用。モスクワのタイポグラファー、オルガ・ウンペレヴァの手によるその文字は、抒情と静けさをたたえ、写真集『Lirio』の世界に花を添えています。
2025年11月に開催された世界最大級の写真フェア PARIS PHOTO の弊社(bookshop M)ブースで、もっとも多くの人が手に取り、大きな話題を呼んだ本書にぜひご注目ください。
【仕様】
出 版:bookshop M Co., Ltd.
表 紙:SCAR Edition /DAWN Edition ※本文は共通
判 型:縦227mm /横165mm
頁 数:288頁
写真点数:255点
製 本:糸縢り上製本 ※スリーブケース入り
【特典】
日本発売の特典として、脚本家・映画監督の荒井晴彦氏による別刷寄稿文が本書に挟み込まれています。
【定価】
刊行記念展特別価格:税込12,000円〈著者サイン入り〉
※こちらの特別価格は、刊行記念展会場のみでのご提供となります。








