濱田祐史「Yuji Hamada Exhibition」

濱田祐史「Yuji Hamada Exhibition」
濱田 祐史
2025/11/13 ~ 2025/12/01
book obscura

濱田祐史さんの初期の作品『Photograph(2005-2006)が制作されて20年が過ぎ、これまでにさまざまな作品を発表してきました。本展示では、『photograph』や『C/ M /Y』といった代表作をはじめ、現在取り掛かっている作品群となる「KANKO」から約4点展示し、濱田祐史という1人の写真家に焦点をあてていきます。

「KANKO」は例えば旅先で見つけたポストカードなどになっているような誰もが想像するその場所のイメージと、自分がその場所に立って見た際にズレが生じたのに、それらの記憶も曖昧になっていくことを軸に制作し始めている作品群です。

今回の展示では、観光地で販売されているポストカードを収集し、そのカードの上に暗室で制作する作業と同じような行為を施すことで、自身の写真として焼き直した作品を発表します。また、これらのなかから複製した10枚を、展示会「紙の光 光のしるし」(竹尾 見本帖本店/DNPプラザ、2024)の開催に合わせて制作された『detour』に付録してSpecial Editionとして販売致します。

 


 

この世界には多くの写真がある。

そんなことを話すと「ポートレイト」や「ドキュメンタリー」などのジャンルになってしまったり、何が写っているのか、何を写しているのかという見た目の話になるのですが、写真の世界はもっと深く広いのです。その他にもたくさん存在しています。

例えば、定義的写真。
それは「写真」というものを自分はどう捉えているのかを探り「一瞬」や「記憶」「記録」と位置づけて、イメージとして存在しているものを視覚化してきた写真の1つです。

その他にも、物質・現象写真という写真が存在します。
写真の時代の始まりは、目に見えている世界をどう物質にしようかと様々な科学者が思考錯誤した所から始まり、金属板にようやく像が浮かび上がった瞬間に絵画でもない写真という時代に変わりました。フィルムやカメラなど写真における「原理」を使用して、様々なアプローチを試みながらこの世に物質として存在させた写真たちです。

像が浮かび上がるという原理、フィルムの原理、カメラの原理を理解すると「何が写っている」のかという写真ではない写真が見えてきます。

この物質・現象写真を説明する時に真っ先に名前を出してしまうのが濱田祐史さんです。

目で認識出来る光も光ですが、認識出来なくても、光は太陽が登っている限り降り注いでいるもので、それらの光をどう写真にするのかと長時間露光でカメラの前でパフォーマンスをしてみたり、色というものを分解したと思ったら、海水を使って感光液を作ったり、フィルムを使わずに出来る写真をやってきたかと思えば、撮影をした日に食べていたものでフィルムを現像してみたりと、一般的に大きく認知され使われている「写真」の、もう1つの要素を垣間見せてくれます。

このような物質や現象写真の作家たちは、レシピ本やレシピサイトを見た時に、野菜を切って、調味料をいれて、煮込むといった3〜5段階で説明されていたりしますが、彼らの写真のレシピは100段階くらいで認識していて、それぞれの段階でどのような方法をすれば、どのような味に変わり、見た目になるのかいつも実験している気がします。

写真は確かに誰かに何かを見せるためのツールなのかもしれませんが、濱田さんのような写真家の写真を見ていると、見せたいから見せている訳ではなく、写真そのものに対する飽くなき追求が形となり、重さや触感なども付随した「写真」になっているのだと思います。

“写真” とは一体。

book obscura 黒﨑由衣

 


 

■開催情報
濱田祐史「Yuji Hamada Exhibition」
会 期:2025年11月13日(木)- 2025年12月1日(月)
    12:00-19:00
会 場:book obscura(東京都)
定休日:火曜日・水曜日

 
公式サイト掲載ページはこちら

 


 

作家プロフィール
濱田祐史 | Yuji Hamada
1979年大阪府生まれ、奈良県育ち。
2003年に日本大学芸術学部写真学科卒業後、東京を拠点に国内外で活動。
長時間露光中にパフォーマンスを行い撮影したり、アルミ箔を山に見立て写真の真実性を見つめたり、一枚の写真を物理的に三枚の画層に分解し再構成したり、東京湾の海水を使って感光液を作り太陽で焼きつけ海の物質を写真に変換したり、撮影した日に食べたものでカラーフィルム現像し見たものと同時に触れたものの記憶を一枚の写真にしたりと様々な手法を用いて写真の原理から概念を構築し、自身の記憶、偶然などを介して写真の多様な表現機能に根ざしたパフォーマティブな作品を制作している。
主な写真集に「light there」(2023, fragile books)、「Primal Mountain」(2019, torch press)、「C/ M /Y」(2015, fw photography)、「photograph」(2014, lemon books)などがある。