愛知県常滑市栄町

産業編集センター 出版部
2024/10/15 ~ 2024/10/15
愛知県常滑市栄町
【旅ブックスONLINE 写真紀行】
産業編集センター出版部が刊行する写真紀行各シリーズの取材で訪れた、全国津々浦々の風景を紹介しています。
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千年の歴史に支えられる、町の日常に溶け込む製品群
六古窯の中でも最古の歴史をもつといわれる常滑焼は、平安時代末期の1100年頃、良質の粘土が豊富な知多半島の丘陵地で始まった。当初は地中に傾斜のある穴を
掘った穴窯で、碗や皿、甕かめや壺などを焼いていたが、室町時代には穴窯から大窯に代わり、大型の甕や鉢が中心となる。この頃、半島全域に分布していた窯は現在の常滑市街地に集中しはじめ、これが今日の常滑焼へと引き継がれていった。
江戸時代後半になると、茶器や酒器などの陶芸品も生産されるようになる。常滑焼の代名詞ともいわれる「朱泥の急須」は、幕末から明治の頃、中国から技法が伝わり、常滑で大きく発展した。また明治以降は、近代化により需要が増大した「土管」にいち早く着目し、上下水道や灌漑用の土管が主力製品となる。日本初の鉄道が敷かれた新橋駅では、排水用に常滑焼の土管が採用された。
そんな長い歴史をもつ常滑の町は、そこかしこにレンガの煙突が点在する古くからの町並みが今もそのまま残っている。名鉄常滑線の常滑駅から東に5分ほど行ったところに「常滑市陶磁器会館」があり、ここで現在の陶磁家たちの作品が展示販売されている。そしてここが「常滑やきもの散歩道」の出発点となっている。
「やきもの散歩道」とは、昭和初期ごろ最も栄えた窯業集落一帯を指し、今も残る煙突や窯、焼物工場などの歴史的産業遺産を巡る観光スポット。せまく曲りくねった路地が延々と続くが、登窯や黒板塀、土管坂といった情緒あふれる風景が次々に現れ、見る人を飽きさせない。ここには現在も多くの作家や職人が住んでいて、工房を開いている。中には陶芸体験のできる陶房や、作品の展示即売をしているところもあり、休日には陶芸愛好家や観光客で大いににぎわっている。
陶磁器会館で入手できるパンフレットには、やきもの散歩道AコースとBコースが紹介されている。Aコースは初心者向きで距離は1.6キロ、所要時間一時間。このコースで大体の見どころはカバーしている。Bコースはいわゆる「通」向きのコースで、距離は4キロ、所要時間は約二時間半。常滑の歴史などもっと深くこの町と常滑焼を知りたい人のためのコースだ。
散歩道を歩いていて気づくのは、迷路のように入り組んだ細道を取り巻く家や庭や塀に、常滑焼の甕や土管があまりにも自然に置かれていること。焼き物の町は数あれ
ど、ここまで製品自体が日常に溶け込み、一体となっている風景は珍しいと思った。これも1000年という気の遠くなるような歴史の成せるワザなのだろうか。
※『ふるさと再発見の旅 東海北陸』産業編集センター/編より抜粋







