Cubano y Cubana

Cubano y Cubana
濱田 昇
2018/09/06 ~ 2018/09/12
アイデムフォトギャラリー「シリウス」

以前から訪れたいと思っていた国、キューバ。国交は緩んだとはいえまだまだ発展途上で物資が少なく大変な日常かと思いましたが、行ってびっくりとても明るい表情で精一杯生きている感で、今の私にはとても新鮮なものでした。

キューバの首都ハバナ、ゲバラゆかりの地サンタクララ、ヘミングウェイゆかりの地コヒマル、世界遺産シエンフェゴス、トリニダーと極力移動を減らしての人々の動き、表情を撮影してみたく臨みました。

Cubano y Cubana

キューバと米国が国交を回復し、両国の首都に大使館を再開(2015年7月20日)、その1年半後にまだ諸外国の息吹に染まっていないピュアーなキューバに濱田さんはカメラ片手に舞い降りた。
これまでフランス、ベトナム、バルト三国(エストニア・ラトビア・リトアニア)、クロアチア共和国、スロベニア共和国、中国、台湾、韓国、イタリア、マルタ共和国、メキシコ、カナダを何度となく撮影に出かけている濱田さんにとって、未知なる首都ハバナを中心にシェンフェゴ、トリニダー、サンタクララ、コヒマルを歩き巡ったキューバの6日間は格別の時間だったようだ。

東京に居るときには週5日の仕事をこなし、2日の休みは撮影三昧、早朝も苦にせずどこへでも気軽にでかけて行くタフさを備えている。そしてカメラ・レンズに至っては、実際に使って身につけた技術と感覚が半端ではなく、新しいことにも旺盛ですぐ自分のものにしてしまう柔軟さを持っている。
5年ほど前にこの同じ会場で発表した”スナップショット・赤外線デジタルモノクローム”「エレメント」は濱田さんの真骨頂と言っていいほど技術、感性が重なり合う見ごたえのする写真展だったと記憶している。また、発表はしていないが写真の基本中の基本”光を読む”を体現しているような作品があることを私は知っている。

キューバといえばアーネスト・ヘミングウェイが思い浮かび、さらにウォーカー・エヴァンスとくる。そう革命前のキューバで人々を隠し撮った「MANY ARE CALLED」も印象的だ。
ソルボンヌ大学で文学の講義を受け帰国したエバンスは作家を辞め写真の道に進み、29歳のときに取材でハバナを訪れヘミングウェイと出会い知己を得る。ヘミングウェイは話し相手エバンスの滞在を伸ばすために宿泊費を肩代わりしたと言われている。
キューバについてはカリブ海の諸国、社会主義国、ゲバラ、カストロ、クラシックカー、サルサ、モヒートのハバナクラブ、葉巻、野球などから私達は勝手に独自のキューバ像を作り上げてきた。
そんなステレオタイプは横に置いて、今おきていることに反応する至福、ハバナを自由に時間の許す限り一人で歩き廻るという贅沢。

あれから80年を越す時が過ぎ、若いエバンスが試みたと同じスナップちょっとに心を留め撮影された濱田さんの写真「Cubano y Cubana」(男と女)から今のキューバが立ち上がってくる。

三浦和人 201808