上田 和寛 写真展「Tokyo Sketch」

レポート / 2017年7月5日

冬の朝、東京のビル街に太陽の光は直接届かない。けれど、ふと目を凝らせば、ビルや窓ガラスに反射した陽光がキラキラと光彩を放ち、見慣れた街並みが特別な場所に変わります。

「みんな、自分は特別じゃないと思っているかもしれません。けれど周りを見ると、街は所々に光が差し込み輝いていることに気付くでしょう。こういうきれいな街に住んでいる特別感や、自分も物語の主人公なのだと感じていただけたら嬉しいです」。

上田和寛さんは51歳にしてデビューを果たした異色の経歴を持つ写真家です。

息子さんが野球の強豪校に入学したのを機に、父母会の活動で自営業と両立できるカメラ係を担当。練習試合ともなればグラウンド中を駆けずり回って部員全員を撮影しました。
ある練習試合で夕日を逆光にグラウンドを整備する球児を写した一枚。活躍できなかった球児が一瞬見せた悔しさや切なさといった感情が写っていました。それ以来、上田さんは一人ひとりの物語を映し出すカメラの魅力に引き込まれます。
ライカを購入した2年前からは本格的に作品をつくり始め、自営の塾長をしながら週2日、1日7~8時間を撮影に費やしてきました。

「ここだけの話ですが…高校3年の夏が終わり次の夢を決めあぐねていた息子に、50歳からでも新しい夢を持って努力できることを伝えたかったんです」。

海外映画のワンシーンのような作品をつくりたいと構図にこだわって撮影したり、訪欧してアイルランドとパリの街を撮影したりと紆余曲折を経たある冬の朝、都内のビル壁に反射して方々に降り注ぐ光にカメラを向けます。そこには、上田さんが撮りたかったドラマのようなモノクロームの世界があったのです。
こうして生まれた展示作品は、上田さんの柔和な瞳が見つめる、一人ひとりの光に彩られた物語が映し出されています。
作品が気になる方はぜひ会場へ足を運んでください。

【上田 和寛 写真展「Tokyo Sketch」】
会期:2017年6月30日(金)~7月13日(木)
10:30~18:00(最終日は14:00まで)
会場:エプソンイメージングギャラリー エプサイト(日曜休館)

KAZUHIRO UEDA Webサイト
http://kazuhiroueda.com/