渡辺 千昭 写真展「聖山 永遠のシャングリラ」

レポート / 2017年9月2日

~まぼろしの聖山・シャングリラ、25年の集大成!

会場には、一畳もの大きな和紙にプリントされた伝説の聖山・シャングリラをとらえた50点の作品が並びます。シャングリラとは、ジェームス・ヒルトンの小説「失われた地平線」に描かれている空想上の桃源郷のこと。
山岳写真家の渡辺さんは25年にわたり、シャングリラのモデルと言われる中国の香格里拉(中甸:ちゅうでん)や、チベット自治区などの辺境に広がる悠大な聖山を撮影してきました。

赤銅色に染まる聖山をバックに。せっかくなので、今年2月に完成したという写真集を手にもっていただきました!

「中国の奥地やチベットの素朴な村を訪れました。道なき道を進んで辿り着いた先には、5千~6千メートル級の山々に囲まれた山岳信仰が盛んな村があり、心根の清廉な人たちが暮らしていました。まさに僕の考えるシャングリラの世界。農家の一室で寝袋に包まりながら『人間にとって何が幸せなのか』考えました」

作品には、日本の失われつつある原風景への思いも込められています。雄大な山々と、その自然と同化しながら生きる人々の姿を見てほしいと話してくれました。

一方で、渡辺さんは日本の伝統技術である「和紙」を使った新しい写真表現に挑戦しています。写真用の和紙「おおむらさき」の開発に携わり、和紙を使った写真の個展やサークルなどの活動を精力的に行っています。今回の展示で使われている和紙は全て「おおむらさき」だそう。

「写真表現には、もっと多様な視点があって良いんじゃないかと考えていあmす。和紙を使うことで『白』の表現に幅が出ますし、テクスチャーを生かすことで立体感が生まれます。しかも丈夫で変色しない。版画的な色の調整をする作品づくりも面白いですね」

作品に目を向けると、和紙にプリントすることで、黄から赤にグラデーションする山の頂は金箔を貼ったような輝きを放ち、絶妙な色の変化で黒い岩肌がより立体的に演出されているのが分かります。それが「シャングリラ(桃源郷)」という作品テーマの神秘さを際立たせているのかもしれません。

生涯現役でこれからも山を撮り続けたいと瞳を輝かせる渡辺さん。デジタルプリンタの普及で広がった写真表現の一つとして、和紙にプリントする面白さや、独特の風合いを見てほしいと、話してくれました。

会期中は毎日在廊されているそうなので、和紙を使った写真表現に興味のある方、聖山を見て心洗われたい方、渡辺さんと話をしてみたい方は、ぜひ会場に足をお運びください。

【渡辺 千昭 写真展「聖山 永遠のシャングリラ】
会期:2017年8月31日(木)〜9月6日(水)
12:00~19:00
会場:ポートレートギャラリー