秦 達夫 写真展「The Master’s hands」

レポート / 2017年9月5日

風景写真家が撮る、南信州の伝統と文化を伝える職人ドキュメンタリー!

風景写真家として幅広く活躍している秦達夫さん。屋久島やニュージーランドなど国内外の絶景を収めてきました。しかし撮影スポットに人が押しかけることで荒れてゆく自然環境に悩み、写真を撮れなくなった時期もあったそうです。
そのような時に、長野・飯田市の花火職人を撮影をすることに。取材・撮影する中で、飯田市に花火会社は3社あり、そこで全国の7割の花火が作られていることを知ったといいます。以降、花火職人を筆頭に酒、漆器、阿島(あじま)傘、皮革製品、ウクレレ、提灯、和紙、水引と、飯田市の伝統を受け継ぐ職人の姿をカメラに収めてきました。

「僕をここまで生かしてくれた故郷に、少しでも恩返しをしたい。大切にしているのは、伝統と文化、そして命の継承です。例えば現在、阿島傘の職人はたった一人しかいません。この方が傘づくりを止めてしまうと、伝統や文化は絶えてしまうわけです。そうした現状を知ってもらいたい」

それが顕著なのが皮革職人さんの写真です。真剣な表情で子どものランドセルを発注する父親の姿に始まり、制作過程、そして子どもの入学式…動物の命を奪って得た材料でつくられた「モノ」に新しい命が宿るまでの伝承のストーリーがしっかりと刻まれています。子どもの卒業後は父親のバイク用バッグとしてさらに新しい命が吹き込まれる予定なのだとか。

「皮革職人さんは動物の命を奪って得た材料で革製品をつくっています。その命を継承することの大切さを伝えるために、学校などで『食べ物の命』について話す活動をしているんです」と、真剣なまなざしで職人さん一人ひとりのエピソードを話してくれる秦さん。

会場に展示されている約50点のモノクロ作品には、伝統のモノづくりに打ち込む職人さんたちの真剣な眼差し、繊細な動きを見せる指先がさまざまな角度からとらえられています。

「いつもの集中している姿を撮りたいんです。邪魔にならないよう、できるだけ自分の存在を消して、カメラも無音モードで撮影していますね。撮ってるの?と聞かれるくらい(笑)」

撮りたいシーンがあれば、職人さんの作業スケジュールに合わせて都度足を運ぶのだとか。こうした配慮は、撮影スポットが荒れる様に心を痛めてきた秦さんならではの配慮かもしれません。
最後に、職人さんたちの気持ちや生き様、長野の県民性などを読み取ってもらいたい、と秦さん。今後は風景写真家として、長野の四季とモノづくりの関係性が分かるような作品づくりをしていきたいと熱弁してくれました。

今後の抱負を語る秦さん。
来年、屋久島の世界自然遺産登録25周年にあわせた写真展を計画中とのこと。

連日のように多くのファンが訪れる会場には、撮影で知り合った職人さんの商品が並ぶ「南信州ミニ物産展」も!
秦さんの思いや職人さんたちの思いなど気になる方は、ぜひ足をお運びください。

会場には南信州ミニ物産展コーナーが。遠山郷の霜月祭を撮った写真集と、今回の展示でお世話になった職人さんが作ったハンドメイドのランドセルを手に。

【秦 達夫 写真展「The Master’s hands」】
会期:2017年9月1日(金)~9月6日(水)
11:00~19:00(最終日は15:00まで)
会場:オリンパスギャラリー東京
https://fotopus.com/event_camp…/showroomgallery/detail/c/622
※オリンパスギャラリー大阪:10月20日(金)~10月26日(木)

秦達夫オフィシャルサイト
http://hatatatsuo.com/