飯田 信雄 写真展「PARTICLE」

レポート / 2017年7月18日

自然の中にきらめく光を捉えた美しい作品は、写真界の印象派!

装丁家の坂川栄治さんがプロデュースするギャラリー内は、心地良いカフェやリビングのような空間です。近年の美術館やギャラリーに多いホワイトキューブ(白い天井・白い壁)ではなく、あえてシックな赤と黒の壁に、ギャラリーのコンセプトである「部屋に飾る絵」をテーマにピックアップされた飯田信雄さんの作品38点がずらりと並びます。

長くフォトグラファーとして活躍してきた飯田さんは鉄腕アトム世代とあって科学やSFが大好き。以前はトレフィン(レンズのつや消しに使われるビニール素材)を化学反応させることで宇宙をイメージした作品づくりをしていました。

その作風がガラッと変化したのは、2011年3月11日の東日本大震災後。

「これまで信じて来た科学は万能ではないと知り、不安な気持ちに駆られた。その時、ふいに“自然や光を撮らなければ”という感覚が沸いてきました。気が付くと余震の続く中、近所の公園に足を運んでいました。すると、葉に反射した光が丸い光の粒となって降り注いでくる。その時の幸福感や自分が見ている光に満ちあふれた光景を写真で表現したいと思いました」。

その言葉どおり、画面いっぱいに光がきらめく様は、まるで光を捉えようと模索し続けた印象派のよう。実は飯田さん、近視に老眼が加わったことで、それまでただぼやけていただけの世界が、ぼやけているのに輪郭は分かるようになったのだとか。
しかし通常のカメラでは、人間の目で見ているような光の表現は難しいもの。そこで、特殊なレンズに改造を加えることで、光を丸く表現できるようになったと教えてくれました。

晴れた日でないと光を撮影できないため、撮影スポットは家の近所の公園や新宿御苑、代々木公園、小石川植物園といった都内の公園が中心になります。昨年は、群馬・川場村の道の駅に約1週間滞在して撮影するなど少しずつ範囲が広がってきました。

「光はどこにでもあります。これまでは近場で撮影していましたが、今後は違う場所に行くことで何か別のものが見えてくるのではないかと期待しています。例えばゴッホが滞在場所によって作風が変化したように」。

光と自然をメインにした飯田さんの作品は、世界はこんなにもキラキラと輝きに満ちていているのだと実感させてくれます。優しく話してくれる飯田さんの人柄もにじみ出ているような印象を受けました。飯田さんの作品が気になる方はぜひ会場へ足を運んでください。

【飯田 信雄 写真展「PARTICLE」】
会期:2017年7月4日(火)~7月29日(土)
11:00~19:00(最終日は14:00まで)
会場:クー・ギャラリー(日曜・祝日休館)
http://queuegallery.com/schedule.html

飯田信雄 Webサイト
http://www.nobuoiida.com/