~アメリカのコンテストで高い評価を得ている女性写真家が伝える“多様性”や“共生” ~
アメリカ・サンフランシスコの対岸に位置するオークランド在住の写真家・兼子裕代さん。これまで日本やアメリカを中心に作品を発表してきました。
今回、会場に展示されているのは、多様な人々が思い思いに歌っている姿をとらえた作品「歌う人」シリーズです。すでに確立された世界であるシリアスなポートレートよりも、被写体が何かを表現しているところを撮りたいと考えた兼子さんは、2010年からこの「歌う人」シリーズを撮り始めました。
「サンフランシスコもオークランドも多様な人種が共生している場所。様々なバックグラウンドを持つ人たちを撮る上で、人種・年齢・性別などの別なく全世界共通である“歌う”という表現をとらえようと考えました」。
ご近所さんや友人の友人などに声をかけ、歌っている姿を撮影しているのだと言います。ちなみに撮影場所や歌のセレクトは被写体がセルフプロデュースしているのだとか。好きな歌やその時の感情に合った歌などをセレクトするそうで、中には「Star Wars」を歌う強者も。それを、自宅の庭やバルコニー、あるいはビーチや近所の教会の前で歌いながら、歓びや悲しみなど様々な感情を表現していて、本当に“多様”さを感じます。
印象深い作品は、展示の2カ月前に撮影した「Sittin’ on the Dock of the Bay」を歌っている男性の写真。サンフランシスコの歌を生き生きと歌う姿に、急きょ展示に加えることにしたそうです。
「見る人も含めて多様な人たちが共存する展示空間を作りたいと考えていました。はからずも展示期間が、長崎に原爆が投下された8月9日から、終戦記念日の8月15日までの1週間であることから、“他者との共生”について考えるきっかけになればと思います」。
十数年ぶりに日本で兼子さんの作品を一挙に見ることのできる貴重な機会! 写真を通して世界の人々の多様さに触れたい方は、ぜひ会場に足を運んでください。
【兼子 裕代 写真展「APPEARANCE―歌う人」】
会期:2017年8月9日(水)~8月15日(火)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会場:銀座ニコンサロン