佐藤 岳彦 写真展「明治神宮 100年の森―大都会でつながる生命の物語―」

レポート / 2017年8月22日

森の多様性から生命の神秘を考える夏休み特別イベント!

大都会の真ん中に鬱蒼と広がる深い森――明治神宮の森。そこはかつて荒れ地のような景観が続いていたと話す佐藤岳彦さん。人の手が入らなくても永遠に生命が循環する森を目指した造営工事から約100年、約70万平方メートルのそこは今、たくさんの生きものが生息する常緑広葉樹の森となっています。

会場に展示された大小さまざまな作品は、佐藤さんがカメラマンとして参加した「鎮座百年記念 第二次明治神宮境内総合調査」で撮影したもの。玉虫やトンボ、タヌキ、オオタカ、不思議な模様を生み出す変形菌(粘菌)など、様々な生きものたちが自然の中で命を育んでいる様が垣間見れます。

「自然を理解するためには生きものの多様性を知ることが大切だと、僕は考えています。細分化した生きものの決定的瞬間だけでなく、森全体がどういう仕組みになっているか、森がそこにあるとはどういうことかをイメージすることが大切です。感性ができれば、その森がなくなるとはどういうことか、未来について考えることができるでしょう。そのため森に生息する様々な生きものを撮影しています」。

生きものが好きな人間なので…と自身のことを評する佐藤さん。「明治神宮 100年の森」展は、自然や森の一つの捉え方として挑戦した表現だと言います。
もともと佐藤さんが作品を通して表現したいのは自然の森羅万象という本質的なもの。身近なところにある自然から、熱帯地域や東南アジアのジャングルまで、「密やかな野生」をテーマに自然が生み出す様々な生命のつながりを撮影してきました。
そこにあるのは佐藤さん独自の自然観であり、死生観です。

「森を見ると、身近なところに死があることが分かります。多くの生きものが生まれ、育ち、死を迎え、土に還り、そこから新しい命が生まれる。だから人間にとって自然は心地良さや優しいイメージがある一方で、神秘さや怪しさ、あるいは森の闇や気配といった得体の知れないものへの畏怖や恐さも併存しています。そうした自然の生み出す世界を、これからも撮影していきたいと思います」。

会期中は毎日、佐藤さんの熱いギャラリートークが行われていて、訪れた数十人の方々が真剣に耳を傾けていました。
また、小・中学生向けの「100年の森新聞」が配布されていて、ギャラリートークや展示作品を通して感じたことを書き込めるようになっています。夏休み中の子どもたちや保護者の皆さんがこぞってオリジナルの新聞づくりをしている様子はとても微笑ましかったです。

明治神宮の森を知りたい方、深い森全体を見ることで生命のつながりに触れたい方、撮影秘話や生きものに関する佐藤さんの詳しいお話が気になる方は、ぜひ会場へ足をお運びください。会期はあと数日ですのでお早めに!

【佐藤 岳彦 写真展「明治神宮 100年の森―大都会でつながる生命の物語―」】
会期:2017年8月11日(金・祝)~8月24日(木)
10:00~19:00(最終日は16:00まで)
会場:フジフイルム スクエア
http://fujifilmsquare.jp/detail/17081102.html