広瀬 耕平 写真展「土を織る」

レポート / 2017年11月17日

モノクロームの「土」を前に、自分の心と向き合う!

約20年前、複雑な思いを胸に上京したという広瀬耕平さん。誰も知り合いのいない東京の街をビルから見下ろしたところ、人の行き交う様子が故郷の干潟の水の流れに重なったそう。
それから10数年経った頃、ずっと帰っていなかった故郷へ帰る機会が。実家の前に広がる干潟に立ち、足元のぬかるみを見た広瀬さんは、東京の路上も干潟の泥土も同じだと感じ、気持ちが楽になったと言います。それが「土を織る」シリーズのきっかけです。
また、このシリーズは、和紙フィルムを使っているのが特徴です。和紙の繊維に合わせて現れるモノクロームの泥土の質感がとても面白く、作品に向き合っていると様々な思いが頭をよぎります。

「和紙フィルムで撮った作品を暗室で現像すると、ゆっくりと浮かび上がってきた像が夜空のように見えた。雲泥の差という言葉があるように、天と地には大きな隔たりがありますが、価値は等しい。東京の街に何万もの人がいるように、土の中には何億という微生物がいるのだと思うと、それまで自分が悩んでいたことがちっぽけなものに感じました。しかも繊維を使っていることで、自分が故郷の土を羽織ったような感覚になった。ずっとわだかまりのあった故郷と自分を一体化することができたんです。『土を織る』シリーズは、過去に対して、自分が素直になった作品です」

自分にとって、写真を撮ることは世の中を受け止める行為なのだと話す広瀬さん。それを最も実感するのが、コンタクトプリントを前にした時だそう。
会場には、作品の一つとしてコンタクトプリントも展示されています。

ぜひ会場へ足を運び、普段は意識することのない「土」と対峙し、自分の心と向き合ってみてはいかがでしょう。2箇所同時開催ですが、ギャラリーEMでは連続性を意識した展示、TOTEM POLEでは劇場型の展示と趣向が異なり、それぞれ楽しめます。

【広瀬 耕平 写真展「土を織る」】
会場①:TOTEM POLE PHOTO Gallery(月曜休廊)
期間:2017年11月14日(火)~11月26日(日)
12:00~19:00(最終日は16:00まで)
http://tppg.jp/member/hirose_kouhei/09.html

会場②:Gallery EM nishiazabu(日・月曜休館)
期間:2017年11月7日(水)~11月25日(土)
12:00~18:00
http://www.takeuchi-studio.jp/gallery_em/index.html