山本 嵩 写真展「Childhood landscape」

レポート / 2017年12月5日

幼い頃に見た、曖昧で優しい記憶を辿る!

これまでスナップを中心に作品づくりをしてきた山本嵩さん。これまでの作品を振り返ると、子どもの頃に見た風景が根底にあるのだと言います。道端に咲く小さな花、家の前に広がる田んぼや用水路、木々に囲まれた終わりのない道、母に手を引かれて歩いた坂道から見た夕焼け。そこには、子ども心に安心できる温かい記憶があったそう。

メイン作品の前で。「少し窪地になっている田んぼの間の坂道を、親に送り迎えしてもらった。坂の上から見た夕焼けは、幼少期の一番の記憶です」と山本さん。

展示作品は33点。撮影場所は山本さんが幼い頃に暮らしていた町で、今回の初個展にあわせて十数年ぶりに懐かしい町を歩き回ったそう。様々な場所が変化する中で、子どもの頃の記憶と変わっていない風景をおさめたのだとか。
オールドレンズ(Nikon50mm1.4)独特のボケ感と、和紙へのプリントによる柔らかい色彩が描く光景は、少し曖昧になった過去の美しい記憶を思い起こさせます。

「この町と僕のつながりは、10歳まで暮らしていたという点だけ。行こうと思えば行ける距離だけど、心の距離は遠くなっていました。撮影にあたり久しぶりにこの町を歩きました。よく遊んだ場所、いつも歩いた道など。子どもの頃の曖昧な記憶というのは、誰にとっても普遍的なものです。こういう風景あるよねと、懐かしい気持ちを感じてもらえれば嬉しいです」。

等間隔に並べられた作品は、過去を振り返りながら辿った道のりと季節の移り変わりを表現。また、田んぼや生き物を組み写真にまとめた作品は、幼い山本さんの目に映っていた特別な世界を瑞々しく切り取ったもの。どの作品も、観る人の郷愁を誘います。
撮影時期は6月から9月と短かったため、今後は冬から春にかけても撮影し作品として掘り下げていきたいと、山本さんは抱負を語ってくれました。
ぜひ会場へ足をお運びください。

時系列と季節の流れに沿って展示。陰影のアクセントが郷愁を誘います。

田んぼと生き物を、組み写真にした展示。オールドレンズならではの、味のある世界観に引き込まれます。

【山本 嵩 写真展「Childhood landscape」】
会期:2017年12月3日(日)~12月16日(土) 11:00~19:00
※会期中は9(土)・10(日)のみ休み
会場:フォトギャラリー・アルティザンTOKYO