横内 香子 写真展「FLORA ―フローラ―」

レポート / 2018年10月13日

大正モダンなギャラリーに飾られた「花」

一般道から見た建物外観。アユミギャラリーとして1984年に開廊して以来、さまざまなジャンルのアート作品が展示されてきました。

東京・神楽坂にあるアユミギャラリーは、英国のハーフティンバー風の木造建築1階にあるレンタルギャラリーです。建築家の高橋博氏が自身のアトリエとして1953年に建てた建物で、2011年には登録有形文化財(建造物)に登録されています。趣きある空間は漆喰や木材が使われていて、大正から昭和初期の柔らかな空気が漂っているよう。

室内の空気に溶け込むように展示されているのは、写真作家の横内香子さんの作品「FLORA」です。2部屋の構造を活かし、メインスペースには額装された作品が、奥の小さなスペースにはアクリル加工された少し小さめの作品が飾られています。「FLORA」というタイトル通り、写っているのは横内さんの表現する「花」です。

奥の小さなスペースの様子。作品の展示というより、小さな窓越しに庭の花々を眺めているような感覚にもなります。「先日、台湾フォトに出展した際に、来場者の方から『あなたの作品はファインアートだ』と言われて嬉しかったんです。自分の目指している表現が腑に落ちたというか」と横内さん。

「幅広い層の方が来廊されるギャラリーなので、見て気持ちが落ち着くように、ギャラリーの空間に合わせて展示を考えました。自宅に花を飾るイメージですね。といっても私が目指すのは、有象のものを撮って無象のものを感じさせる表現ですので、想像される花の写真とは違うかもしれません」

横内さんは三脚もストロボも使わず、朝の光を集めるように撮影しているそう。作品からは朝の清潔な空気や、草花の匂い、海風が通り抜ける音など、五感が揺さぶられる何か(無象のもの)が伝わってきます。一方で、日常性のない世界でありながらも、どこか生活感や人間の存在を感じさせ、それがギャラリーの雰囲気に馴染んで居心地の良い空間を生み出しています。

入口から見た正面の展示。きれいな花や森の中に咲く花、また枯れた花や散った花などさまざまです。スペース中央には古机が置かれ、横内さんの写真集や作品を閲覧購入できます。

横内さんの師匠である写真家の水谷幹治さんは「花の形の風車を写した作品を見た瞬間、風車が動き出したような感覚になりました。写真とは時を凍らせるもので、人がその前に立って作品を見た瞬間に凍っていた時が動き出す。横内さんの作品はまさに連続した時間の流れを感じさせてくれますね」と、写真展の感想を語ってくれました。

サンルーフに置かれたソファーから見る展示はなかなかない光景です。期間中は毎日在廊されているそうなので、ぜひ足を運び、横内さんの作品と大正モダンなギャラリーの空気を感じてみてください。

少し見えにくいですが、写真右奥にサンルーフのようなスペースがあり、ソファが置かれています。

出窓際のソファに座ってみたギャラリーの様子。
漆喰と木材の質感がなんとも風情があります。

【横内 香子 写真展「FLORA ―フローラ―」】
会期:2018年10月12日(金)~10月17日(水)
11:00~19:00(最終日は17:00まで)
会場:アユミギャラリー
https://www.ayumi-g.com/exhibiton

横内さんのブログ
https://mintcark.exblog.jp/