島田 健一 写真展「艾年」

レポート / 2018年10月19日

銀塩モノクロが表現する、距離感の喪失したシンプルな世界

路面店で、赤いひさしとレンガが目印です。
写真作品の展示も多くあるので、ぜひ足を運んでみてください。

神保町と水道橋の中間地点にあるGALLERY Mestallaは、企画兼レンタルギャラリーとして2007年の開廊以来、さまざまなアーティストの作品を展示しています。

「艾年(がいねん)」とは、数えで50歳を指す言葉。その節目の歳を迎えたという島田健一さんの作品は、2016年の個展「紙片」に続く全3部作のうちの第2作目です。
9点の銀塩モノクロ作品には、折り重なるように立つ木々が太く細く枝を張りめぐらせる様が写っています。

「本を読んだり音楽を聴いたりしていると、頭の中に一つの情景が浮かんでくることがあります。まだ形を成す前の漠然としたものですが、次第に自分の記憶をたどって形を補完しはじめます。それを僕は〈原初のイメージ〉と呼んでいます。前回から続くこの3部作は、ある本を読んだ時に僕の中で像をなした〈原初のイメージ〉をたよりに歩き撮影したものです」

その本に出会ったからこの世界に身を置くことを決意したと、島田さんは教えてくれました。原初のイメージをさらに別の記憶や経験で補完していくことで、イメージは至極シンプルなものになっていくとのこと。
撮影したのは決して特別な場所ではなく普通のありふれた景色だそうですが、銀塩モノクロが描く距離感の喪失した世界は、寂寞とした印象も覚えます。

「許す限りの時間をかけて1枚1枚を眺めて感じた皆さんの〈原初のイメージ〉を、ぜひ教えてほしいです」

すでに3作目の製作に取りかかっているという島田さん。期間中は在廊しているそうなので、ぜひ会場へ足を運び、島田さんの作品から浮かんできた皆さんの原初のイメージについて話してみてはいかがでしょうか。

1枚1枚をじっくり見れる展示です。「この作品のために初めて山で撮影しました。天候の変化が激しく、風が止まった一瞬、求める光線が得られるわずかな時間、葉が落ちてから雪が降るまでの期間という限られた中での製作でした。何もかも初めての経験です」と、島田さんは裏話をしてくれました。

【島田 健一 写真展「艾年」】
会期:2018年10月15日(月)~10月27日(土)
13:00~19:00
会場:GALLERY Mestalla(日曜休廊)
http://gallerymestalla.co.jp/exhibisions/…/shimada/index.htm

島田さんのWebサイト
https://www.shimadakenichi.com/