外久保 恵子 写真展「NIGHT WINDS WHISPER TO ME」

レポート / 2018年11月13日

夜風が囁きかける叙情的な作品

写真家でギャラリストでもある外久保恵子さん。国内外で個展を開き、マキナ67で写した都市郊外の風景をいくつも発表してきました。
今回展示されているのは、外久保さんがこれまで外してきた夜間に三脚を使って撮られた、19点のゼラチンシルバープリントです。たまには違うことをしてみようという軽い気持ちで夜の街角へカメラを構えたところ、思いがけず「風」を感じてシャッターを押したのだそう。しめやかで叙情的な作品には、わずかな光がとらえた夜闇を吹き抜ける風が存在しています。

「三脚を使って夜の風景を撮ることで、最後までぴっちり撮れること、写真がきれいなことに純粋な喜びを感じました。手持ちで撮る普段の作品とは違った特別な作品です」

「大きなテーマをもって撮影しているわけでも、積極的に被写体を選んでいるわけでもありません。ただ、夜に撮影しなければこの風は写らなかったと思いますし、いつもと違うことをやるところから言葉が出てきました。無理しないよう自分の日常の中でひっかかったものを写真を通してひっぱり上げているだけ。記憶のバイオリズムが一致した時に、自分が撮ってきた写真と、音楽や本の一節がリンクするタイミングがあります」

作品に人が写っていない理由について、「あまり意識したことはありませんが、自分の世界をつくりたいという思いがあるからでしょうか」と、外久保さん。

写真展のタイトルは、ある楽曲の一節からとったもの。初めて夜の写真の個展をした2014年のパリで、ギ・ド・モーパッサンの短編小説『夜』が引用された写真に関するエッセイを偶然見つけ、自分のやっていることとリンクした外久保さん。曲とモーパッサンが頭をぐるぐるしはじめ、別のタイトルで構成を変えて展示したいと思うようになっていったそう。

写真を撮ることは日常と並行してあるもので、何をするにも無意識に頭の中で考えているという外久保さん。今後は日中の撮影に戻り郊外の写真を撮っていきたいと、展望を話してくれました。
ぜひ会場へ足を運び、作品から聞こえる夜風の囁きに耳を澄ませてみてはいかがでしょう。

作品は2サイズからなり、すべて会場にて展示販売されています。

【外久保 恵子 写真展「NIGHT WINDS WHISPER TO ME」】
会期:2018年11月12日(月)〜11月24日(土)
10:30~18:30(最終日は17:00まで)
会場:ギャルリー東京ユマニテ(日・祝は休廊)
https://g-tokyohumanite.com/exhibitions/2018/1112bis.html