有川 典宏 写真展「Comfort / 居心地」

レポート / 2020年2月20日

~日常と非日常が交差する、それぞれが住んでいる部屋で撮られた女性のポートレート~

展示された38点の女性のポートレートは、すべて彼女たちの自室で撮られたもの。ぱっと見では、どの人も結構部屋がキレイに片付けられているなと思ったけれど、それはモノクロによるマジックで、室内の細々としたことよりも、まず女性自身に目を奪われていたからだと気づかされます。
2017年のキヤノンギャラリーでの写真展「IGOKOCHI/居心地」の続編とも言える本展では、ロケーションが自室というところは変わりませんが、女性だけを対象にしたモノクロ作品をメインとした展示となっています。

紙選びも結構迷われたとのこと。「局紙もいいと思ったのですが、すべてこの紙でというのは違うなと。いろいろ検討してキャノンのラスターに温黒調でプリントしました。フィルムっぽいなと思いました」。

ーこのテーマで撮ろうと思うようになったきっかけを教えてください。

「仕事でウィーンに行って人を撮るということがあり、その人の自宅で撮ったのが面白いと思ったのがきっかけですね」。

ーモノクロ作品ということで人物が際立って見えますね。

「部屋の情報量を抑えるためもあるのですが、もう一つはカラーだと卑猥に見えてしまうのをおさえられるというのもあります」。

ーこれだけの数の女性を撮影される、どうやってとお聞きしてもいいでしょうか。

「知り合いからはじまり紹介、紹介が多いですね。この38点の中に39人が写っているのですが、今までに196人を撮りました。3年前にキヤノンギャラリーで展示をしたのですが、その時は男性の部屋もあったのですが、一部の人から『男の部屋は見たくないよね』という声があり、今回は女性に絞りました。
乱雑で狭い部屋もあるのですが、撮ると何故かそれは出てこないですね。11-24㎜のレンズで主に11-14mmで撮っています。

表情の指定はなく、笑わないでということだけ伝えています。結構撮りますし、ポーズは自由にしてもらっています。日常である部屋に私がいる時点で非日常がはじまっているのですが、その日常と非日常というものを、写真の中で表しています。女性は女優になる要素がどこかにあって、私のために演じてくれていると感じますね。
私のような変なものがきても、その人にとって一番リラックスできる自分の部屋という存在の方が強くなり、違和感がなくなっていくのではと思います」。

ステートメント

一人暮らしをはじめたばかりと思われる何もない部屋から、その人“らしさ”が伝わってくる部屋まで、人と物との境界線があいまいにも感じられるポートレート。しかし、その中で違和感として発せられている彼女たちの表情や佇い。それが彼女たちの部屋を覗き見しているような錯覚にもとらわれます。現代の女性がもつ、自分が落ち着く世界と人に見せる自分への距離、それがリアルに感じられる世界。ぜひ会場へ足をお運びください!

ギャラリーの外面では、カラー写真での展示も。モノクロ作品と違った魅力があります。

【有川 典宏 写真展「Comfort / 居心地」】
会期:2020年2月14日(金)~2月27日(木)
10:00~18:00(最終日は14:00まで)
会場:エプソンスクエア丸の内 エプサイト
(日曜定休/会期中の休日、2月24日(月)は開館)
https://www.epson.jp/showroom/marunouchi/epsite/gallery/exhibitions/2020/0214/

有川さんのWebサイト
https://www.norihiroarikawa.com/