Misuzu Shibuya 写真展「MIRROR」

レポート / 2020年10月25日

~写真を介して写し出す、自分自身の物語~

会場にて、渋谷さん。

Misuzu Shibuyaさん 写真展「MIRROR」が、10月25日(日)まで表参道駅から徒歩5分ほどのところにある写真専門ギャラリーNADARで開催されています。関西を拠点に活動されているフリーランスフォトグラファー のShibuyaさん。ファッション、ポートレート、ビューティー撮影などを行う傍ら、パリ、ベルギーなど国内外問わず、精力的にアート作品を発表されています。

Shibuyaさんは、今年3月に開催されたNADAR主宰の公募展「めざせ個展」でギャラリー選出のナダール賞を受賞されました。本展は、ナダール賞受賞特典である5日間の個展開催権を獲得したことにより開催された写真展です。

Shibuyaさんが写真を介して創造された作品世界の中で確固たる存在感を放つ女性たち。「私にとっての写真は鏡。しかしそこに写るのは私自身の姿ではなく投影です」と、Shibuyaさんは語ります。

「作品を見返すと笑顔の女性が少なく、アンニュイな世界観のものが多い傾向があります。外見的な面では黒髪ロングの女性が多い。自身が絶対にできないスタイルだからだと思います」と、Shibuyaさん。

「わたしも、物語の主人公になりたかった。でも、鏡の中には望む姿は映らない。だから写真の中の彼女たちに、自身の物語を重ねているんです」

幼い頃から文学少女だったというShibuyaさん。小説に登場する女性たちの人物設定に、常々違和感を感じていたとのこと。

「小説に登場する女性は美女ばかり。「美しい黒髪の女性」といった描写とかね(笑) わたしはそんな髪をもっていませんし、早い段階から美人と美人ではない人との差を感じていました。わたしが主人公だったら、この物語は成立しないかもしれない。そう気付いたとき、とても悲しかった」

そんなある時、仕事で知り合った雑誌社の方の言葉が深く印象に残ったとShibuyaさんは話されます。

「ファッション誌を読む女性たちの多くは、モデルの姿に自己投影しているという話をお聞きしたんです。そのとき、自身の中でくすぶっていた感情が明確になりました。わたしも物語の主人公になりたかったのだなと。しかし、自身が主人公になれないことも理解していたので、ならば写真を介し、他の女性たちに自身の物語を投影すればいいのではないかと思ったのです」

「作品世界を作り上げるには、モデルとの信頼関係が必須。そして、この人に任せれば必ず綺麗に撮ってもらえるという安心感こそ、モデルとの信頼関係構築への近道です」

本作では総勢8名の女性モデルを起用されたとのこと。作品の世界観がそれぞれ大きく異なることと同様に、その女性像も千差万別。ただひとつの共通点は、いずれの女性も、各々の魅力が最大限に活かされているというところです。

「被写体を絶対に可愛く撮るということにこだわっています!どれだけ可愛く、綺麗な女性でも、この角度から撮影してはいけないという部分が必ずあります。なので、常に美しさが増す角度を考え尽くしています。撮影後、レタッチ前の画像の段階でどれだけ相手に驚きを与えられるか。そこが写真家としての腕の見せ所です」

モデルのAnnaさん。

「本作のモデルの中で最も付き合いが長いのはAnnaさんで、かれこれ5年ほど一緒にお仕事をしています。撮影時、特に指示を出さなくてもAnnaさんはわたしの意図をくみ取ってくれます。なのでAnnaさんとの撮影はお互いに無言なことが多いです(笑)」と、嬉しそうに話されるShibuyaさん。

こちらは、Annaさんとの出会いの1枚。そして、Shibuyaさんの作風が固まるきっかけとなった作品でもあります。「この作品はAnnaさんのつてで、ベルギーとパリでも展示をしたことがあります。その際、ギャラリストから「Timeless(普遍的)」という言葉をいただきました。この作品は観る時代に影響されないという意味で、とても印象に残っている言葉です」

美しいだけではない作品を目指して

被写体の美しさを引き出すことに重きを置くShibuyaさんですが、その点が自身の弱点でもあると語ります。

「被写体を美しく撮るということを第一義とすると、それ以上の作品は撮れません。その意識から脱しない限り、よりインパクトのある1枚は撮れないということですね。女性の美しさにしてもそれは一面的なものではなく、多面的な魅力が重なり合うことで醸し出されているものです。美しさだけではない、もっと力のある1枚を撮りたいということが今の目標です!」

物語の主人公への強い憧れと、自分自身がその主人公にはなれないということへの葛藤。その理想と現実のギャップから生じる様々な感情を作品制作の原動力へと変換しているShibuyaさん。その思いの強さこそ、鑑賞者の視線をとらえて離さない本作の魅力の根源だと感じました。作品のもつ力を会場でぜひ体感してみてください!

会場では、写真集もお買い求めいただけます。50部限定ですので、ぜひお早めにチェックしてみてください!

【Misuzu Shibuya 写真展「MIRROR」】
会場:NADAR
会期:2020年10月21日(水) 〜 2020年10月25日(日)
12:00〜19:00(最終日は16:00まで)
https://g-nadar.net/gallery/201021

Shibuya さんWEBサイト https://www.shibuyamisuzu.com/