プロデューサーの村山氏から本日連絡が入り、昨年11月に取材して文に起こして
あった内容を、本日リリースさせて頂くことになりました。
心の整理がつかずおりましたが、先月移転されたピクトリコショップ&ギャラリー表参道さん、写真家トーマス・ハラ(Tomas H. Hara)さんへの敬意を込めて情報をリリースして欲しい、という村山氏の言葉を受け止めました。
本当に素敵なギャラリー、素晴らしい写真展でした。
~知らないと見えてこないもの。東京の“今”を知り見ることで気づかされること~
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東京に活動拠点を置く、アルゼンチン出身のストリートフォトグラファー トーマス・ハラさんの写真展「奇跡 - Aufheben 2020 Tokyo」にお邪魔し、この展示のプロデュースをされたフォトエージェンシー会社ゼータイメージの代表 村山さんにお話を伺ってきました。
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会場に足を踏み入れてまず驚くのが、壁一面に展示された作品。A4サイズ144点(4×36列)の作品は、世界を代表する都市である東京の“今”を切り撮ったストリートスナップ。質・量ともに見るものを圧倒する躍動感があります。
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A1、全倍サイズの作品もあり、会場の短辺で向かい合うように展示された作品には、何だろうと思わせるしかけが。多重露光で撮られた東京。写真家トーマス・ハラさんのお子さんがお母さんのお腹にいるエコー写真、そのお子さんが無事産まれてからの“赤ちゃんと両親の手”。それ以外にも、写真家がまだお母さんのお腹にいる頃のご両親、南米移民一世であるお祖父さんが写真家のお父さんを抱く写真という、写真家本人のルーツに迫り、文字通り写真家が東京へ移住することになったきっかけへとリンクが示されています。その作家のルーツというべき写真を背にして作品と向き合うと、都市と人間(生命体)という一見異質に感じられるものが、根源的なところで全てがつながっているのだと感じられます。
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過去があって現在(今)がある。その東京の“今”をトーマスさんの視点で読み解くには、『以前取材させていただいた、 村山さんのプロデュース の角田和夫写真展「哀糸豪竹」で書かれていた「(写真家の)表現の奥に潜むものに触れることができたとき、初めて作品を鑑賞したことになる。そのためには表現者に根差すものを理解しなければならない。それには自ずと、作者の生い立ちを遡ることになる」(一部抜粋)』ということを、呼び起されました。
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(村山さんに教えていただき)作品をよ~く見ると2pxの細い(黄色)の線が、どの作品にも入っています。破線になっていてそれは8の部分を抜いている(写真家の)お子さんが宿った8月と、誕生された8月を表しているそう。テーマでもある“奇跡”というものは、あらためて探さなくとも常に日常の中にあり、それを見つけられるか、 正も負も含めて受け手である自分次第に委ねられていると、作品が教えてくれている気がします。
自分自身も東京に住み目にしているようで、読み飛ばすではないけれど、結構見飛ばしているなと痛感します。けれどそれをつきつけ指摘し非難するのではなく、世界を愛おしいと思うトーマスさんの視線が間にあることで、今世界中で蔓延し日本には就職氷河期から停滞している将来への悲観的な気持ちにも、希望をもらったような気がします。東京って自分が思ってるよりも、いいかなって!
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こちらの会場であるピクトリコがギャラリーを併設した直営店をオープンしたのは、写真を撮ることが身近になってきた一方、作品をプリントする歓びを伝えたいという思いがあると、以前お聞きしたことがありますので、そういった意味でも素敵なことだと思いました。
浮世絵のように机の上で楽しむ芸術品にしたいということで、シンプルなボックスも作られたとのこと。飾るというアクションも必要なく、気軽に見たい時に見るというシンプルな鑑賞も楽しめそうです。
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【Tomas H. Hara Photo Exhibition「奇跡 - Aufheben 2020 Tokyo」】
会期:2020年10月28日(水)~ 11月1日(日)
11:00~19:00(最終日17:00まで)
会場:ピクトリコ ショップ&ギャラリー表参道
https://pictorico.jp/press-release/detail/637/
Tomas H. HaraさんのWebサイト
http://www.tomashhara.com/