広川 泰士 写真展「In the Days Gone By」

レポート / 2020年11月12日

~まさに写真はタイムカプセル。50年前の筑豊が現代に蘇る写真展~

会場にて、広川さん。
10日(火)、12日(木)、14日(土)、15日(日)は14時~19時、それ以外の日程は16時〜19時に在廊予定とのこと。夕方頃が確実かなと話されていました。

広告写真やCMなど幅広いフィールドで活躍される一方、独自のスタンスと行動力で多くの作品制作をされている広川泰士さん。その若き日の未公開作品の写真展がPlace Mで開催されています。

筑豊(飯塚、直方、田川)1971年
ステートメント

戦後の高度成長にともなう石炭から石油へのエネルギー転換により、炭鉱が相次いで閉山していた時代(1971年)の筑豊(飯塚、直方、田川)を撮らえた67点の作品が展示されています。

筑豊(飯塚、直方、田川)1971年

21(歳)の写真をやりはじめてまだ1年も経たないころに撮ったものです。8㎜ムービーをいじっていて編集中に見た小さい1コマがおもしろいな、と自己流で写真をはじめました。これらは無造作に印画紙の箱に入れていたものです。経年の変色があったりもしていますが、その時のプリントそのままを展示しています。(この作品は)これがあるからこそ今写真をやっているのだなと感じています。自分の中に大切にしまっていたもので、まさか発表することがあるとは思っていませんでした。今やっている写真とは傾向が違いますが、(瀬戸さんに)今回お話をいただき、初展示をすることにしました。

ー作品をずっと保管していたからこそ、こうして私たちも見ることができたのですね。

(何度)引っ越ししてもやっぱり捨てられなかったな、(大袈裟に言うと)僕の写真の原点みたいなもの。日の目を見ないだろうと思っていたので、今回額装されてこういうところで自分のものを見るのは面白いです。50年も経つとどうやって撮ったかなど生々しさは消えているので、客観的どころではないですね。人の写真を見るではないですが、不思議な気がしています。時間というものは本当に面白いですね。

ーかなりの点数が展示されていますが、今回の展示に合わせてセレクトされたのでしょうか。

セレクトしていますね。広さもありますし、ギャラリーにある額はほとんど使ってしまいました。

ー時代的なものでしょうか、人がもつ原始的な生きるという強さを感じます。

筑豊という土地柄もあると思いますが、大人も子どももたくましい顔つきをされている方が多いです。(エネルギー政策の転換で)軒並み閉山していた時代で、僕は最後ぐらいに行った感じです。いろいろな方が行かれて(写真を)撮っていますが、最近本橋成一さんと話しましたが、(展示写真を振り返り)まったく同じ人たち( 山本作兵衛さんや上野英信さんとか)に会っていて、感慨深いです。

Bus Stops (L.A.)1974,1975年
ステートメント

ーミニギャラリーには「Bus Stops (L.A.)1974,1975年」38点が展示されていますが、お仕事で行かれたのでしょうか。

こちらもはじめて発表するもので、遊びに行ったときのものです。こちらのプリントは中途半端なラフプリントだったので、焼き直しました。(筑豊の作品を示されて)これらは思いきりがいいというか乱暴だけれど強く、今同じネガからでも同じものは焼けないと思いましたね。

Bus Stops (L.A.)1974,1975年

ーそうなんですね。(撮られた年の1971年から1974年)3年経って上手くなったからなのかと失礼ながら思ってしまいました。

今年9月ごろかな、に焼きました。何だか楽しかったですね。ネガも安定していて焼きやすかったです。

ー70年代の焼けるネガが、カビも生えず残っていて良かったです。

デジタルだと探せなかったりしますが、ものとして残っているのは強いですね。通し番号をふりネガの箱とベタのファイルを保管していて、ベタで探せるとネガも探せるというシンプルなことですが、ベタのファイルは日記帳のようなものです。

ーロサンゼルスに行ったことあるのですが、70年代は何もなかったのですね。

当時はまだまだ田舎で、車社会なので人があまり表に出ていなくて、人が集まるバス停をテーマに撮ろうと思いました。ロサンゼルスオリンピックの前と後で変わりました。70年代のカリフォルニアはまだまだ田舎でした。

ー今こうして未公開の作品を当時のプリントのまま見ることができるという贅沢な機会、ありがとうございます。

僕にとっても嬉しい出来事で、見せることができて嬉しいです。見てもらってたくさん感想をいただきたいですし、瀬戸(正人)さんには感謝です。

炭鉱(ヤマ)の労働に従事する男とその家族たちの姿は、「一山一家」と言われるように、現代では目にすることのない人と人の強い絆とつながりが伝わってきます。それはさびれつつある炭鉱(ヤマ)のあるマチを際立たせ、一大産業が築いた光と影を感じます。
その後日本のエネルギー政策は2011年の東日本大震災後、再び安価で安定調達が可能な石炭への依存を高めてきているという、皮肉な時の流れを覚えます。

広川さんの後の作品に通じる見るものへ訴えかけてくる強さとセンス、その原点を見た気がします。撮られた約50年前、その時の思いが凝縮したプリントを見る貴重な機会、ぜひ足をお運びください!

筑豊(飯塚、直方、田川)1971年

※14日(土)19:00~、瀬戸正人さんとのオンラインライブトークイベントが予定されているとのこと。会場に来られない方はこちらもぜひ!
詳しくはこちらの
webサイトで。

【広川 泰士 写真展「In the Days Gone By」】
会期:2020年11月9日(月)~11月15日(日)
12:00~19:00
会場:Place M
https://www.placem.com/schedule/2020/main/20201109/exhibition.php

広川さんのWebサイト
https://hirokawa810.com/