阪東 美音 写真展「メロウ」

レポート / 2020年11月25日

~10代のリアルな表情と、制服という緊張感がうむ内面性~

会場にて、阪東さん。

ー“メロウ”とても印象的なタイトルですね。

熟しているという意味があることは知っていて、もともとこちらの作品は人物のみを撮っていて、それを並べて見たときにパッとメロウが合うのではと思いました。もう一つ(メロウには)アイルランド語で人魚という意味があります。人魚姫のお話で地上を歩くには苦痛があり、さらに王子様を助けたのは自分だと伝えたくても声が出ず、というやるせなさが、自分の学生時代のまわりと合わせないと話についていくことができない、といった気持ちとリンクしているなと、このタイトルになりました。

「笑わないで」ということだけをお願いされ、友人たちを撮影されたとのこと。
その姿は撮られる(見られている)ということを意識しているように感じられない自然さがあります。

ー自分ではどうにもできないという気持ちですね。

高校生の頃が一番SNSをしていて、本当はしたくないけれど見ていないと、次の日の話題についていけなかったりなど、もうちょっと早く生まれたら良かったなと思っていましたね。

ー確かに私の頃は連絡するのは電話のみだったので、常にチェックしないとという煩わしさはなかったですね。

私は(今)22歳ですが、(SNSを)やっていないと「えっ」と言われたりします。仕事では使っていますが、ハマってしまうとのめり込んでしまいそうで。またそれを苦と思っていない同世代の友達たちを見ていると、大変じゃないのかな、 やだなと思う人もいると思いますし…、まわりに合わせている人もいるかなと。 (友達と離れ)一人になったらしんどいのでは。その一人になったときの表情をイメージして撮りました。

ー人物だけでなく、The日常といった風景が展示されているのがおもしろいですね。作品をセレクトされる際に大切にされていることはありますか?

私自身、人通りが少ないところや大通りから一本入ったところの方が落ち着く気がします。歩いていてもアスファルトの間から生えている雑草などによく目がいき、やるせないだろうなと思ったりしますね。
今まで構図などで選んだりしていましたが、(今回は)コレ!と思う表情のものを選びました。より自分の心の表情が投影、表されたものが展示されていると思います。

「撮っていて、女の子って人形っぽいなとあらためて感じました。
次作はそういった感じで撮ってみようかな」とお聞きしました。

ー今回の写真展をされることで心境に変化があったりはしましたか?

去年学校を卒業して(専門学校も)高校と同じように女の子はこうあるべきものといったものがあって。(卒業して)1年が経ち、環境が大きく変化し縛られていたようなものがなくなりました。(過去の)写真を見ると浄化されたような気持ちに変わった気がします。
自分の中の(今の)いやと思う気持ちが(作品にも)反映されていましたが、それと向き合い真正面から見ることができるようになりました。

ー今後作品性が変わっていくかもしれませんね。

今回まとめていて変わっていくと思いました。今まで風景を入れることはなかったのですが、次の世代にバトンを渡せると感じました。

制服を着た若い女性たち。制服の女子という言葉がもつ一般的なイメージはそこにはなく、若さゆえのナイーブさや若い女性が持つ自然な美しさ、それと制服という緊張感との対比は、10代のリアルな部分と内面性を描写し、見るものも否応なく巻き込まれるように感じます。
展示されている何気ない風景の作品は、自分の通学路だった道にそっくりで、楽しいことも多かったけれど、なぜ毎日友達と連れ立って帰らないといけなかったのかという一種の束縛感も思い出してしまいました。作品から受けとる印象は 色とりどりのはず。ぜひ会場へ足をお運びください!

【阪東 美音 写真展「メロウ」】
会場:Gallery TK2(月曜/火曜定休)
会期:2020年11月18日 (水) 〜29日 (日)
水~金:12:00~19:30 
土日祝:12:00~18:00(最終日17:00まで)
https://www.interart7.com/%E3%83%A1%E3%83%AD%E3%82%A6