～ どれもが時間をも凝縮しているような、さりげないカットの数々 ～

年に２回ペースで定期的に作品を発表されているコウノさんの「Seoul」「Hongkong,Macau…」の二つの展示にお邪魔してお話を伺ってきました。

ー違うタイトルでの1週間ずつという展示ですが、今回の写真展について教えてください。

2014年のソウル・フォトに参加展示をした際に、韓国～香港と訪れ撮影したものになります。セウォル号沈没事故が滞在時に起きた影響か、ソウルの街は人影もまばらで何か違和感を覚えました。「Seoul」に関して（撮影）期間も短めでしたし、１ヵ月とかもっと長期でいれば（中身的にも）あつくなったかもしれません。いつもは一回でいろいろと行った先をまとめて一つの作品にしていますが、これは行き先も二つだけですし、前半・後半と期間を分け、タイトルもストレートなものにしました。前後と分けたことで、自分の中でも明確な写真の差や比較もできたので良かったと思っています。

ーセレクトされる時に意識していることなど教えてください。

（街の）イメージの固定概念的なものは意識的に外しています。逆にその時に見ていたものを掘り起こしプリントしていくように、自分が何をして何を見ているのかを再発見しているように作業しました。

ー暗室作業に今回3～4ヵ月ぐらいかかったとことですが、プリントについても教えてください。

今回プリント環境が変わったことで、プリントが違っています。まず色を見るライトを蛍光灯から（テストで）LEDにしていて、濃く出したつもりですが、少し浅いかなと感じています。カラープリントの場合、ライトが生命線だと思っていて、色は光の反射なので、その（ライトの）差が出たと思います。今後前のような色味に合わせるか、このままでいくかは、どうしようかなと考えています。
コロナ渦ということで、今までと違うことにチャレンジしてみようと思い、（「Seoul」は）印画紙も変えています。色味はいつものKodakの光沢紙から富士の半光沢紙に変えた影響も大きいと思います。「Hongkong,Macau…」はいつものKodakの光沢紙なので、見比べてもらうと面白いかもしれません。

ーソウルの街は日本に似ていますね。

そうなんです。香港とソウルはもっている街のエネルギーの向き方が違っていて、僕の中ではソウルはやさしい印象です。韓国はとっかかかりが少ないというか、意外と自分が目がいってしまっていたのがハングルだったので、なるべく外すようにはしました。「Seoul」は プリントしていて、これだ！といった強いものがないまま進んでいったので結構焦りました。場所でまとめてしまうと、それに引っ張られてしまい、自分の中でもしっくりこないなと思いましたね。

ー今海外に行くことが無理な状況下ですが、落ちついたら行ってみたい、撮りに行きたいところを教えてください。

普通にパリの美術館に行きたいですね。写真撮る撮らないに関わらず、昔10年ぐらい前に行ったときに見た美術品を今見たらどう思うのかというのも楽しみたいです。 去年の今頃はインドネシアとフィリピンに行っていて、それが中途半端に終わっているので 、写真を撮りに行くなら今のところインドネシアがいいですね。モンゴルを自転車でまわってみたいというのもあって、言い始めるときりがなく夢がいろいろあります （笑）

年齢を重ねてきたというのを自分の中でも感じてきていて、海外から帰ってきて街を歩いていておもしろくないなと思ったりします。それは年のせいなのか、ここ数年で東京が大きく変わってきたせいなのか。それもあってここ最近はずっと暗室にいたのですが、心のメンタル的にやばくなってきていて、街中を歩いて撮りに行かないとと思いました（笑）撮っていないとプリントのセレクトもかたくなりがちですし、撮ってプリントをしてというサイクルが一番です。今海外には行けないですし、まずは自転車で行ける関東近郊を撮ろうと思っています。

街の路地から路地へと道をたどりながら、コウノさんと同じ視点で彷徨い、その街自体を先入観なく客観的に感じることができます。それは自分が普段、日常という時間の中に埋没させている、記憶の一片一片を見ているかのよう。人生は旅のようなものと言われるけれど、 そんな日々を見つめ直してみたいと感じさせられます。

【コウノ ジュンイチ 写真展「Seoul」「Hongkong,Macau…」】
会場：ギャラリー蒼穹舎
会期：2021年1月25日（月）～1月31日（日）
　　　2021年2月1日（月）～2月7日（日）
13:00～19:00
http://www.sokyusha.com/gallery/20210125_kono.html