木村 和平 「袖幕」展

レポート / 2019年3月30日

~光を目指す小さなプリマたちの心の躍動~

エドガー・ドガの「踊り子」のように、幻想的で美しく、また舞台袖ならではの高揚感などが光となって表出しているような印象を受ける作品です。じっと見つめていると、今にも小さなプリマたちが作品から抜け出し会場内を踊り出しそうな感覚になります。

Bギャラリーは、BEAMSの企業理念を受けた文化発信空間として企画展を開催しているアートギャラリーです。これまで絵画や写真、立体、建築、音楽、ファッション、哲学、文学など多岐にわたるアート作品を展示し、国内外へ発信しています。

現在展示中の企画展は、木村和平さんの2冊の写真集『袖幕』(2018年)と『灯台』(2019年)の出版を記念したもので、二部構成になっています。
第一部の「袖幕」は、バレエ教室の様子を舞台袖から写したものです。袖幕からカメラを向け、正面左右から当たる舞台照明と対面しながら撮る中で、偶然に引き起こされた光のブレが、緞帳の隙間で出番を待つ小さなプリマたちの高揚や緊張を表象しているよう。

袖幕から身を乗り出すように光の舞台をのぞきこむ子供たちの姿や、光の残像を残しながら舞台に向かう姿をとらえた作品など、木村さんならではの美しい世界観が広がっています。

「私が生まれた頃から、6歳離れた姉はバレエを習っていた。多々ある記憶の中でも、発表会の日に舞台裏を覗きにいった際に体感した、舞台袖に射し込むおおきな光。まるで初夏の満月のような光。そのイメージが、いまでも身体のおくに、鮮明に残っている。」(ステイトメントより抜粋)

「袖幕」の展示について、「バレエの照明をイメージして、作品だけでなく床にも照明を当てることで木村さんの作品イメージを忠実に再現しました。一つの作品の前に立ち、ゆっくり鑑賞していただくと、木村和平の捉えた視点はもちろん、被写体の視線や光の行き先などに表れている美しさを感じていただけると思います」と、キュレーターの藤木洋介さん。

会場では、木村さんの写真集が展示販売されています。
左から『袖幕』『灯台』『袖幕/灯台セット』(数量限定ボックス付き)。
今回の企画展では展示されていない作品がたくさん収録されていて、とても見応えがあります。

また、第二部の展示「灯台」は、木村さん自身が影響を受けたノイズ音楽の鑑賞体験を灯台の光に例えた作品です。「袖幕」とは全く異なった展示内容になるそうで、「相反しているようにも見えるそれぞれの作品を紹介することで、木村和平の表現の幅や感性を感じていただけると考えています。ぜひ二部共に鑑賞し、若くして輝かしい才能のある木村和平の世界を楽しんでください」と、藤木さんは話してくれました。
ぜひ会場へ足をお運びください。

【木村 和平 写真展「袖幕」「灯台」】
会期①:「袖幕」2019年3月21日(木・祝)~4月3日(水)
会期②:「灯台」2019年4月5日(金)~4月21日(日)
11:00~20:00(会期中無休)
会場:B GALLERY
https://www.beams.co.jp/news/1370/

木村さんのWebサイト
http://www.kazuhei-k.com/