大和田 良 写真展「THE AUTO」

レポート / 2021年3月22日

会場にて、大和田さん。

5月に両国に移転されることを発表されたピクトリコショップ&ギャラリー表参道 。表参道での最後を飾る本写真展にお邪魔してお話を伺ってきました。

ー今回は車をモチーフにしていらっしゃいますが、車を撮ってみようと思われたきっかけを教えてください。

去年3月のBEAMSでの個展で、普段撮っているスナップ写真から200枚ぐらいのプリントを展示したのがきっかけです。そこでは作品販売もしていたのですが、いろんな被写体の展示があった中で、車の写真に興味を持たれるお客様が非常に多く、クラシックカーのオーナーの方たちとお話する機会がありました。実は被写体として今までクラシックカーに興味を持ったことはなかったのですが、ちょうどカラーの被写体を継続的に撮ってみたいと考えていたこともあり、撮り始めることにしました。それまで盆栽や仏像といった、モノクロの重厚な作品が多かったので、車との出会いにより新しいアプローチを得たことになります。今回の写真展では、その途中経過をお見せすることにしました。

ーカーオーナーの方たちとお話しすることは 、とても大切なことなのでしょうか。

そうですね。盆栽やワインのときもそうですが、撮影されたイメージというのは結果的にそこに表れたもの。僕が制作中大切にしているのは、コレクターの方との対話で、なぜそれに魅力があるのか、車のどんなところが好きなのかを取材すること、それが一番重要なプロセスだと思っています。
今回、パーツやディテールをとらえた作品もありますが、これらは対話の中でうまれてきたイメージ。自分が造形的にキレイ、カッコイイと思う部分には限りがあると思っていて、オーナーの精神性や価値観が表れるものを写真に撮り、そこから車というものの魅力を伝えたい。車のシリーズに限らず今まで撮影してきたシリーズ全てに対して言えることですが、イメージなどそれを表すアイコンなどは表層的なもので、重要なのはその裏にあるストーリーだと思っています。

作品を16:9というサイズにされたのは二つの理由が。一つは断片的に見せたいということ。もう一つは広がりのある風景として見せたいということ。 16:9 は車というモチーフに対して、その二つが両立できるサイズとのこと。

ー車というモチーフを見て感じることは人それぞれだと思いますが、作品からそのモノ自体を愛している人たちの思いが伝わってくるように感じます。

造形がキレイ、カッコイイというのは一つのポイントだと思いますが、丁寧に手入れがされている、磨きこまれている、長年乗っていることで生じた板金のズレ…。そんなことも含めて、それらの裏にあるオーナーの精神性が見えてくるのが、写真の面白さだと思います。

ーいろいろな車がありますが、どのようにセレクトされているのでしょうか。

自分からオーナーに声をかけたりもしますが、オーナーやまわりの友人たちからも紹介してもらい、できるだけ多様な価値観で車を探すようにしています。自分の好みや趣味が出はじめると、作品としての信頼性が僕の中で失われてきますので。

ー途中経過と話されていましたが、今後も継続的に撮っていかれるのでしょうか。

そうですね。個展をきっかけに、たくさんの方に知ってもらい、新たな情報が集まり、いろいろなアプローチもいただきます。人からの提案を受けたり、教えてもらったりすることは、僕にとって制作のきっかけとなっています。自分の視点から生まれるものは、日々のスナップぐらいのものでしょうか(笑)

ー大和田さん独自の感性で昇華させた作品を多数発表されてきましたが、その表現世界のつくりかたをお聞きしてもよろしいでしょうか。

コレクターや仏像を修復される方などの専門家の方たちの視点、話を伺う時にひらめきを得ることがあります。 そのひらめきの中で、このモチーフは今までどう表現されてきたのか、どういったメディアで表現されることが多かったのかという、僕自身がもっている写真、美術の歴史といった知識をもとに、現代で自分がアレンジするならどの方向性でいくのか 、ということを考えます。歴史や美術史、写真史に基づきながらも、どう自分なりに現代の表現に落とし込むのか、というのが重要なポイントだと思っています。人はどういったものを美しいと思うのか、またその感覚、感性をどう培ってきたのかということを、歴史を見ることで学べると思っていて。それを現代的にアレンジし、専門家の方たちとの対話の中で構築していくのが僕のスタイル。できるだけ僕自身の視点を信用しないようにするというか(笑)。「歴史と個人(コレクター)をうまくつなげてビジュアルにする」というのが、僕が信用しているやり方です。

写り込みをコントロールするため、 シフトレンズを使用して撮影されたとのこと。

作品からはただ美しいだけではなく、カーオーナーの思いや時間、そして車の作り手たちの車という作品への情熱といった、写っていないところまでもが感じとれます。写真でしか表現できない新たな車の魅力、ぜひご覧ください!

車種も明記されていて、車好きの方は車を当ててみるのも面白いかも。

【大和田 良 写真展「THE AUTO」】
会期:2021年3月10日(水)~ 3月21日(日)
10:00〜17:00
会場:ピクトリコ ショップ&ギャラリー表参道 ギャラリー2
https://pictorico.jp/press-release/detail/683/

大和田さんのWebサイト
http://www.ryoohwada.com/
Instagram
https://www.instagram.com/ryo.ohwada/