気候風土や時間、そして人間たちの思惑。様々なレイヤーが無数に重なることによってその姿を現している日本の首都・東京。武蔵野台地の東端にあった水辺がその姿を大きく変え、都市として成長発展を遂げたのは、長い歴史においては実は割と最近の出来事である。海を埋め立て、道を作り鉄道を通し、多くの人間たちが集まることで発展と繁栄を続けてきたこの地は、今もその歩みを止めることなく進み続けている。昭和・平成・令和と、この地で三つの時代を見続けてきた私は、その礎となる場所が、海と陸地をつなぐように走る鉄道路線沿いに展開された地域にあるのではないかと考えた。
今は衛星写真や動画配信などにより、行ったことのない場所でも「ある程度」のことを知ることは可能な時代だ。しかしどんなに優れたデバイスでも、未知のウィルスによって一変した世界や、そこに生きる人々の息遣いを知ることはできない。人類の歴史において後世まで語り継がれるであろうこの時期、この地はどんなレイヤーを紡いでいたのか。後の人々がこの街の歴史を紐解く際、今回の作品がその標となれば、これに勝る喜びはない。
会場:アイデムフォトギャラリー「シリウス」
会期:2021年3月25日(木)〜31日(水)
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