Ayumi Yoshimura 写真展「Kisame」

レポート / 2019年1月31日

~忘れていた記憶に再会できるフィルム作品~

被写体を断定して捉えていないスナップは、曖昧な人の記憶の断片をのぞいているような印象を受けます。「撮ったフィルムを現像せずに放置することが多いです。時間をおいてから現像することで、こういうのを撮っていたなと、自分の記憶を思い返すことができます」とYoshimuraさん。今回が初個展とのことで、いろいろやることが多くて大変だったと話してくれました。

都立大学駅より緑道沿いを歩いて6分の住宅街にある「MOUNT tokyo」は、これまでにイラストや写真など様々なクリエイティブ作品の展示が開催されてきたギャラリーです。古民家をリノベーションした店内はレトロな風情と温かみがあり、展示作品の魅力を高めています。

古民家をリノベーションしたレトロで温かみのある雰囲気がただようギャラリー外観。室内の右側が展示スペース、左側が様々なZINEを扱うショップスペースになっています。

展示スペースである土間の白壁に並ぶのは、記憶との再会をテーマにした19点のフィルム作品です。
フォトグラファーのAyumi Yoshimuraさんがライフワークで撮影してきたという6×6判のスナップは、懐かしい湿度と叙情的な表情で、見る人の記憶を呼び覚まします。

ものづくりをしたくて、アート系の大学へ進学したことで本格的に写真の道へ踏み出したYoshimuraさん。その流れでオリジナルのZINEを製作し、MOUNTに応募したのがきっかけで、個展をしてみてはと声を掛けてもらったと言います。ZINEで発表した作品を中心に、今回のテーマに合わせて新しい作品を加えて展示を構成したそうです。

「私にとって写真は、記憶を思い出すきっかけです。昔から無意識に写真を撮っていましたが、今思い返すと、それは終わってしまうことや忘れてしまうことが嫌だという思いがあったのかもしれません。この作品が誰かの過去へつながるきかっけになれば嬉しいです」

会場では、今回の展示に合わせて再編集した新作のZINE(写真右・1,200円)と、ポストカード(500円)が販売されています。ぜひ手にとってみてください。

記憶は無くなるのではなく実はずっとそこにあるもので、きっかけがあれば思い出せるのだという学説が自分の中でしっくりきたのだと言います。タイトルの「Kisame(樹雨)」とは、濃い霧が枝葉に凝集し、水滴となって雨のように落ちてくるもの。記憶を思い出す感覚に似ているとYoshimuraさんが話すように、不規則なリズムで落ちる水滴のように展示された作品を眺めていると、心の底に閉まっていた記憶の断片がポロポロとこぼれ出てくるような不思議な感覚になります。

ニューマミヤ6のしっとりした作品世界に興味のある方、忘れていた記憶と再会してみたい方は、ぜひ会場へ足をお運びください。

ZINEの展示販売スペース。イラストや写真など、様々なジャンルのZINEが並んでいます。どれも作者のこだわりが詰まっています。

【Ayumi Yoshimura 写真展「Kisame」】
会期:2019年1月30日(水)〜2月3日(日)
12:00~19:00(最終日は17時まで)
会場:MOUNT tokyo(休廊:月・火曜)
https://mount.co.jp/gallery/