Ruin 四季との融合

ほりたこうじ / Web写真展 Vol.165 / 2024/04/17 ~ 2024/05/08
「遠い昔に主のいなくなったこのホテルに訪ねてくるのは春・夏・秋・冬という名の4人の常連客。」

80余年の時を経て、自然との調和、四季と融合。
季節が織りなす摩耶観光ホテルの神々しき姿を記録。
アルバム『四季との融合』より抜粋---------

【厳冬】
鉛色の雪雲が港の方へ向かって通り抜ける。
僅かな雲の切れ目から陽が差し込むもまたすぐに厚い雲が重なるように日差しを遮ってしまう。
建物の床に溜まった雨水は日中でも氷ったままだ。
朽ちたコンクリートの軒やガラスの抜け落ちた鉄窓は凍てつき、氷柱が大きく伸びている。
冬枯れを纏った崩れかけたコンクリートは春の到来を遠くかんじさせた。

【夏のおわりに】
9月とはいえセミの声は真夏さながらの賑わいで、森の息吹はいままさにクライマックスの雰囲気を醸し出している。
窓に差し込む陽の光が夏の深い緑を影絵のように照らす。
鉄窓の枠を隔てて、比較的澄んだコマ、くすんだコマ、割れて抜け落ちたコマ・・・それぞれのコマが個性あふれる様相を奏でる。
透き通るような青葉にそよぐ風が、主のいない館の窓に実に豊かな表情を与えつづけていた。
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