~自分が富士の懐に飛び込んだような、新しい“富士山”の光景~
広告、雑誌でのポートレート撮影、山岳カメラマンとしても活躍されている写真家の佐藤友昭さん。その佐藤さんが長年、作品テーマとして撮り続けている“富士山”。その最新写真展にお邪魔してきました。
ー展示されている作品のサイズにまず驚きました。展示されている作品の余白や、作品と作品とのスペースといったものが、ゆるやかな時の流れを演出しているようですね。
まさにそうです。こちらでの展示の公募選考会には銀塩プリントで出しましたが、実際の展示では見てくださる方に、撮るときに見たそのままの自然を感じてほしいと思ったので、大判でのプリントになりました。富士山自体パワーがある山ですし、そのスケール感も感じてもらえたらと思っています。
ーフィルムで撮られた作品とのことですが。
35㎜を首にかけ、4×5を担いで通いました。 展示している写真はアザーカットがなく、現場でその瞬間を1枚しか撮っていない写真となっています。
カラーで撮ったのですが、作品にはたくさんの色をいれないようにしました。情報を多く入れすぎない、引き算した絵作りの方が、自分が見せたいものへの意図が伝わりやすいと思いますし、実際にその景色を見ている感覚も強くなるのではと感じています。
ー今回、作品をセレクトされた際に大切にされたこと、ポイントなどはありますか?
繰り返し歩いたからこそ見えた私だけの瞬間をセレクトしてます。
同じ場所でまた同じように撮りたいと思っても、同じ雰囲気って二度と出てこないですし、その日その時間その場所でしか出会えなかった一瞬を大切にしています。結果的に自分で写真を見ても、こんな景色が富士山にあるのだなと今も不思議に思います。
ー仕事でも数々の山に登っていらっしゃると思いますが、他に登るからこそ見えてくる“富士山”の魅力を教えてください。
富士山は、上の方へと登ると岩と空しかなく、生命体が何もない地獄のようなのです。さらに下の方は森が深く、木がたくさん生えているので、一体どこにいるのかよくわからない迷宮地獄という感覚もあります。
ただ何度も歩いているとゲームのRPG ではありませんが、この道を歩いて一面をクリアしたら隠し扉みたいなものが突然現れてくるような。何回も繰り返し歩き続けると、いつのまにか私が経験値を獲得して、ふとした瞬間にお宝風景が現れたり、何か新しいステージや道が開けるような感覚が現れてきたりします。自分の足で探し続けているとそんな自然の方からのご褒美や、不思議な瞬間が富士山にはあります。そんな二度とは出会えない一度きりの大切な瞬間 「天国と地獄のワンセットの世界」富士山を歩いているとそんな感動を体験できる、そんな魅力があります。
ー“富士山”の新しい魅力を紐解いてきた佐藤さんですが、今後の作品制作についてお聞きしてもよいでしょうか。また今のコロナ渦が落ちついたら行ってみたい、撮りに行きたいところはありますか?
今後も引き続き定期的に富士山は続けるつもりです。以前より撮るという瞬間の精度が上がってきていますし、新たな富士のカタチがまとまりそうです。
そして行ってみたいところはたくさんあって、富士山もそうですが地質的にも歴史、文化的にも面白い場所が日本にも外国にも多く存在し、そんな所のまだ見ぬ角度や新しい感覚で世界を見つめていきたいと思ってます。
佐藤さんが繰り返し登られている中で気づいた“富士山”の僅かな違いや新たな事柄。それは写真が撮られた“瞬間”と同じように、約1万年前から活動期に入ったこの山にとってはほんの一瞬のようなもの。 いずれ消えてしまうかもしれない光景が持っている場の記憶は、目に見えない気配さえ伝えてきます。
佐藤さんの“富士山”への深い愛を写し撮り、私たちに“富士山”の新しい景色を見せてくれる作品の数々。より作品を感じられる展示もぜひチェックしてみてください 。
※1月17日(日) 12:00 - 12:54
J-WAVE「CHINTAI COLORS OF WONDER」に佐藤さんが 約10分間 生電話で出演されるとのことです。 富士山の魅力や写真展「時の記憶」についても話されるとのことなので、 残念ながら写真展に来られないという方もぜひ!
【佐藤 友昭 写真展「時の記憶」】
会期:2021年1月6日(水)~1月19日(火)
11:00~17:00
会場:エプソンスクエア丸の内 エプサイト(日曜定休)
https://www.epson.jp/showroom/marunouchi/epsite/gallery/exhibitions/2021/0106/
佐藤さんのWebサイト
http://satoutomoaki.com/
佐藤さんの twitter
https://twitter.com/tomoakisato