横内勝司 写真展「時を超えて」

横内勝司 写真展「時を超えて」
横内 勝司
2024/07/09 ~ 2024/07/21
京都写真美術館 ギャラリー・ジャパネスク

京都写真美術館 ギャラリー・ジャパネスク 2階展示室にて、2024年7月9日(火)から7月21日(日)まで、横内勝司 写真展「時を超えて」を開催します。


スナップ写真の概念すらなかった戦前の日常をガラス乾板式カメラでスナップ的に捉えた作品群。撮影者の横内勝司は1902年に長野県松本の農家で8人兄弟の長男として生まれ農作業の傍ら独学で写真技術を学び多くの写真を残しました。当時の常識では考えられない技術と自由な発想は今見ても驚きで、どれもが詩情に溢れ「撮る」そして「見る」喜びに満ちている。

しかしながら横内は1936年に33歳の若さで病死し、その後の戦中・戦後の混乱の中でその作品群は一度も発表されることなく忘れ去られた。したがって写真史のどこにもその名を見つけることは出来ない、まさに知られざる天才写真家です。

彼の死から70年が経った2005年の自宅改修時に屋根裏から発見された大量のガラス乾板はそれから更に9年後の2014年に一人の写真家と出逢い現代に甦った。翌年に没後80年を経て初の個展となる横内勝司写真展「時を超えて」が松本市内の小さなギャラリーで開催されると、その写真に触れた人々の驚きと感動は人から人へ、その後もこの写真の存在を知った名もなき人たちの協力を得て全国各地で開催を重ねて来れました。それは決して爆発的ではないが、写真の枠を超えた波紋のような広がりでした。ボクの母親が生まれた時すでに亡くなっていた無名の写真家が残した写真が今も尚、人と人とを繋げていく奇跡の物語です。

デジタル技術の進歩により写真環境は大きく変わり、その定義すら明確ではなくなりつつありますが、この写真に関わってきた10年でボクはアートだの主張だのといった屁理屈や実績やら肩書きやらといった余計なものがシャシャリ出てくる余地の無い写真の本質に希望を見つけた思いです。

コロナ禍の2021年以来2度目の開催となる今回の展示では、今年2月に横内家の屋根裏から新たに発見されたガラス乾板からのプリントと横内自身による当時のプリントも展示いたします。

企画・主催 写真家 石田道行