山田達男写真展「息づかい」

山田達男写真展「息づかい」
山田 達男
2025/03/25 ~ 2025/03/30
Jam Photo Gallery

そこは人が立ち入るのを拒むような荒れた溶岩大地にあり、豊かな伏流水に恵まれ原始の森が広がっていた。真冬に強い風が吹き荒ぶ稜線では地表を這うように茂る樹木の合間から骸骨のような老木が顔を覗かせる。そんな人の手の入らぬ森に惹きつけられたのはなぜだろう。

静まりかえり水や風の音が聞こえるだけの空間に佇むと、自然が奏でるかすかな音とともに気配を感じることがある。その瞬間振り返ると何かの息づかいが聞こえ、張り詰めた中で徐々に際立つ気配を感じながら自分の感覚が研ぎ澄まされていく。

ある日、湿度の高い靄に包まれた森に突然薄日が差し込み、見上げると頭上の磐座とそれを囲む樹々が神々しく目に入ってきた。強風に倒れた大木は湾曲しながら光を求めて上に伸び、その幹を地表の苔が鮮やかに覆いつくした様子があたかも自然な光景で目に映った。溶岩台地では樹木が大きな岩にぐるりと根を回し、雨風に耐えながらずっとそこにあり続ける姿を捉えたくて、ぬかるむ藪の中をぐるぐる回りながらレンズを向けた。

人の手の入らぬ森は想像を超える長い時間をかけて今がある。そこでは地面を覆う落ち葉や朽ち苔むして土に還ろうとする倒木の上に幼木が芽を出し、周囲の植生や環境に強い影響を受けながらもそれぞれが均衡し命が繰り返してゆく姿がある。そして水を貯え呼吸し、二酸化炭素から酸素への循環を永々と続けてゆく。その息づかいは動物の肺呼吸のような動きもなく淡々としたものだが、その気配が私には確かに感じられる。

 


 

▼写真展概要
山田達男写真展「息づかい」
会 期:2025年3月25日(火)〜3月30日(日)
    12:00-18:00(日曜17:00まで)

会 場:Jam Photo Gallery(www.jamphotogallery.com
    〒153-0063 東京都目黒区目黒2-8-7鈴木ビル2階B号室
入場料:無料