北海道増毛郡増毛町

北海道増毛郡増毛町
産業編集センター 出版部
2025/04/11 ~ 2025/05/13
北海道増毛郡増毛町

【旅ブックスONLINE 写真紀行】
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ニシンで栄華を極めた歴史的建造物の町

札幌の北、車で約1時間半のところに増毛町という町がある。現在は人口3500人ほどの小さな町だが、江戸時代から昭和の半ばまで、ニシンの町として栄えた歴史をもつ。
 特に大正時代から昭和30年頃まではニシンの水揚げ日本一を続け、町は隆盛を極めた。町中を歩けば、その繁栄の軌跡をいたるところに目にすることができる。
 増毛駅を起点に歴史的町並みが続く「ふるさと歴史通り」を歩いてみよう。増毛駅は大正10年に開通し、ニシン漁の貨物輸送の始発駅、終着駅として町の繁栄を支えた。平成28年に惜しまれつつも廃線となってしまったが、駅舎は当時のままに今も残っている。
 駅を出てすぐに目につくのが、旧富田屋旅館の建物だ。昭和8年に建てられたもので、昭和50年代前半まで営業していた。その隣には、風待食堂と看板が掲げられた家屋が残る。大正2年に創業された多田商店という雑貨店の建物で、現在は観光案内所として使われている。

 さらに歩を進めれば、東西に伸びる大通りに出る。その通り沿いに、重厚な佇まいの歴史的建造物が次々と姿を現す。明治8年に呉服業を開業し、その後、ニシン漁の網元、海運業、酒造業と幅広く事業を展開し、増毛の豪商と呼ばれた本間家の建物。同家が創業した国くに稀まれ酒造の酒蔵、ニシン粕の保管等に使用されたといわれる築百年以上の千石蔵など、古く味わい深い建物が随所に残っている。
 また、町を少し離れた高台には、旧増毛小学校の建物がほぼ当時の姿を残している。現存する木造校舎として道内最大規模で、平成24年まで75年にわたって子どもたちの学び舎となってきた。
 増毛の町を歩いていると、よくぞこれだけの歴史的建物が残っていたと驚く。それほど広くはない町をゆっくりと巡り歩けば、ニシン漁で町に活気があふれ、多くの商人が行き交う往時の町の残像が心に浮かんでくるようだ。
 ちなみに増毛の由来は、ニシンの群れが来ると海一面にかもめが飛ぶことから、アイヌ語で「かもめの多いところ」という意味の「マシュキニ」または「マシュケ」が転じたものといわれている。
 今ではかつてほどの漁獲量はないが、それでも鮭、カレイ、エビ、イカ、タコ、ホタテなど、豊富な海産物が水揚げされ、増毛の町を支えている。

※『ふるさと再発見の旅 北海道』産業編集センター/編 より抜粋