作者の祖父母が長年暮らしていた岐阜市。年に数回だけ訪れるこの街の風景に作者は幼い頃から惹かれていたという。金華山と長良川という、雄大な存在への憧れ。駅前に立ち並ぶ古い建物や商店街。その傍らにある、再開発によって少しずつ更新されてゆく景色。広がる住宅地と田園の遠く向こうに見える稜線。どこまでも延びる空、移り変わる川の表情、風の匂い。この街の、あらゆる場所に佇む気配。それは不思議な懐かしさだったり、作者にとっての美しさの原点を思い出させてくれる存在なのだ。

故郷とはその街に生まれただ暮らしていたという単なる場所ではない。それがたまたまの出会いからであっても、そこ惹かれ、思い出として見る者の深層に焼き付けられていく過程で生まれる美しいイメージの風景ではないかと作者は私たちに問いかける。心の中に温かな水を流し込むように、そのイメージを作者は時間をかけて再生しようと試みる。外から見た時にこそ主観が客観に置き換わり、内に住む私たちに見失っていた大切な気づきを教えてくれるということを。

 
作者からのメッセージ
「2019年から市内を歩きまわって写真を撮り、個人的な記録として残すようになりました。今回展示する写真は、この数年間で撮りためた数十本のカラーネガフィルムの中から選んだものです。すべて私自身が「忘れずにいたい」と思い「美しい」と感じた、岐阜市の風景写真になります。
昔は家族と一緒に歩いていた街を、ひとりで歩く。歩く度に新しい風景と出会い、過去の記憶と重ね合わせ、自分だけが辿った道を描き足していく。子供の頃から惹かれ続けていたこの街のあらゆる風景を、「地図」としてまとめました。
私にとって、岐阜市はかけがえのない故郷です。その故郷へ帰る写真たちを、暖かいまなざしで迎えて頂けますと幸いです。」

 
・作品点数40点（すべて手焼き銀塩プリント）
・展示作品の販売あり

マツイエツコ写真展「地図」
会期：2023年1月26日-2月5日
　　　水-金 12:00-18:00、土 11:00-19:00、日 11:00-17:00
　　　月火休み
会場：photo gallery pieni onni
　　　〒500-8178 岐阜市清住町2-4-2 大一グリーンビル1F

【在廊日について】
　1月26日（木）・1月28日（土）・1月29日（日）
　時間帯については Instagram（@lovinson61）でお知らせします。

詳細は、公式サイトをご覧ください。