安掛正仁 写真展「朧眼風土記」

安掛正仁 写真展「朧眼風土記」
安掛 正仁
2024/11/21 ~ 2024/12/01
Roonee247 Fine Arts

「朧眼風土記」
 最近、書きものをする時に鉛筆を使う。
 少し、先の円くなった芯で書く線は柔らかく、優しく豊かな気がする。
 思いや考へを残すには、円くなった鉛筆がよろしい。

 今では知らない人もいるだろうが、短くなった鉛筆を差し込んで、使いやすく延長する道具がある。補助軸という。
 小学生の時分、もう何十年も前のことになるが、数本の補助軸を持っていた。
 まだ新しい、鍍金が綺麗に施されたものの中に1本だけ、ずいぶん時代を経てきたように思われる、茶色く、くすんでしまった真鍮製のものがあった。
 当時の私は、そんな古臭い道具に興味もなく、放ったまま、いつの間にか無くしてしまった。

 何でもない事柄が、時を経て、心から離れなくなり、忘れていた記憶を呼び起こしたり、新たな景色を見せてくれたりすることがある。

 鉛筆を使うようになって、くすんだ補助軸のことを思い出した。
 もとの綺麗な金色から、茶色く姿を変えるまでに経てきた出来事を空想したり、私の手元にあった当時の、私の周りの景色を(それはしばしば 音や色彩、体感を伴って)思い出し、当時を追体験するきっかけとなる。

 無くすこともなく、今、手元にあり、触れることができたならば、どんなに豊かなことだろう。
 しかし、それが叶わぬ夢であっても、思い出すきっかけさえ残されていれば、今に再び呼び戻すことが出来ると思うのだ。
 これら一葉一葉がそのきっかけになればと思っている。
 安掛正仁

 


 

安掛正仁 写真展「朧眼風土記」
会 期:2024年11月21日(木)〜12月1日(日)
    12:00-19:00(最終日16:00まで)

会 場:Roonee247 Fine Arts Room 1
    東京都中央区日本橋小伝馬町17-9 さとうビルB館4F
    https://www.roonee.jp

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