北海道目梨郡羅臼町

北海道目梨郡羅臼町
産業編集センター 出版部
2025/04/11 ~ 2025/05/13
北海道目梨郡羅臼町

【旅ブックスONLINE 写真紀行】
産業編集センター出版部が刊行する写真紀行各シリーズの取材で訪れた、全国津々浦々の風景を紹介しています。
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知床の大自然とともに歴史を刻む昆布の町

 日本料理に欠かせない食材として日本人の食生活を彩ってきた昆布。北海道はその昆布の一大生産地であり、生産量は日本全体の9割以上を占めている。
 昆布が全国に広まったのは江戸時代の北前船によるところが大きい。北海道から関西方面へ運ばれた昆布が評判となり、そこから昆布の人気は全国に広がっていった。昆布は各地で重宝され、次第に昆布なら北海道と認知されるようになる。中でも、特に味の良い昆布は三大高級昆布と呼ばれるようになった。一つは、利尻島の利尻昆布、もう一つは道南で穫れる真昆布(まこんぶ)、そして真昆布と並ぶ最高級品とされている羅臼昆布である。
 昆布の町、羅臼は日本の北東端、オホーツク海に突き出た知床半島の東海岸にある。半島の背には知床連山と呼ばれる山々が連なり、その山々の西が斜里町で東が羅臼町になっている。周囲を森、川、海に囲まれ、豊かで手つかずの自然が残るエリアであり、羅臼を含む知床半島全体は、平成17年には世界自然遺産に登録されている。羅臼という地名は、アイヌ語の「ラウシ」(獣の骨のある所、の意)から転化したもの。かつてこのあたり一帯がアイヌの狩猟地だったためらしい。
 羅臼は漁業の町である。羅臼漁港を中心に町は成り立っている。冬から春にかけてはタラ、ウニ。夏はトキシラズ、昆布、ボタンエビとさまざまな海産物を楽しむことができる。また羅臼港はネイチャーウォッチングの発着点となっており、春から夏にかけてはシャチ、イルカ、クジラウォッチング。秋口まではヒグマを見るクルーズ、冬はトドや鷲の神カパッチリカムイを見るツアー。さらに1月下旬ごろからは、オホーツク海に打ち寄せる流氷を見るクルーズもある。羅臼は、オホーツクの海がもたらすさまざまな恩恵を受けている町なのである。
 港の埠頭に立ち、ふと海に目を向ければ、遠くに島影が見える。北方四島の一つである国後島(くなしりとう)だ。根室海峡を挟んで25キロほどしか離れていない。町のランドマークともいえる道の駅からは、その島をはっきり見ることができる。日本の最北の地にいることを実感させられる瞬間だ。

※『ふるさと再発見の旅 北海道』産業編集センター/編 より抜粋