岡田裕介「これが君の声 青の歌」インタビュー

2020年10月9日

岡田裕介 写真展「これが君の声 青の歌-Sound of echo, Song of Blue-」が京都写真美術館 ギャラリー・ジャパネスク2Fにて、9月29日(火)から10月11日(日)まで行われているのでレポートをお届けします。

――前回はペンギンの展示でしたが、今回の展示をイルカやクジラにフィーチャーしたのはなぜですか。

そもそも僕はクジラとイルカの撮影をかれこれ7,8年間撮り続けているんです。作品としては溜まっていたのですが、撮りに行くたび「来年こそはもっといいものが撮れる」という気持ちでキリがなかったんです。
だけど、今回のコロナの影響でいろんな撮影がキャンセルになって、何をしようかと考えたときに「僕には彼らがいた」と思い立ったんです(笑)

――海へ潜るとき、どういった写真を撮るかを決めていますか。

いろんなイメージを持ちながら潜るんですが、やはりネイチャー写真は思い通りにいかないっていうことが経験でわかっているんです。
撮りたいシーンがあっても、天気の影響であったり、光の入り方、被写体の動きに左右されるから、スタジオとかで人物を撮るときと違ってその都度臨機応変に対応しながら撮っています。

――海外撮影の現地ではどのように過ごされているのでしょうか。

基本は毎日撮影です。でもクジラを撮りにいくトンガという場所は、日曜日には船も出さないし飛行機も飛ばない、国全体が休みの日になるんです。なので現地の人たちと豚の丸焼きを食べたり、ラム酒を飲んだりと交流しながら過ごしています。
イルカはハワイ島とバハマで撮影をしているんですが、バハマの時は船にのってフロリダから出て、毎日船上からイルカを探しては見つけたら潜っての日々です。電波も通じないような場所でずっとイルカと一緒に過ごす、最高に幸せな時間です。
ハワイ島での撮影のときは一人でビーチに撮影に出ています。サウスコナという場所にイルカが集まるスポットがあるので、その付近で車から双眼鏡を使いながらイルカを探して、見つけたらビーチから泳いでいくんです。
船とかではなく僕が単身で行くので、何十頭のイルカに僕一人が囲まれているという状況を体験できるのは面白いですね。

――一人での撮影のほうが警戒されないのでしょうか。

イルカも種類や個体、住んでいる場所によって警戒心に違いがあるんですが、クジラよりは好奇心が強いですね。場所によっては向こうから近づいてきて「触って」と言われているような、それで本当に触れてしまうくらいの個体もいるほどです。そこはクジラとイルカの大きな違いかもしれません。

――今回の展示ではクジラを至近距離で撮影された作品を出されていますが、どのように撮影されたのでしょうか。

あれはクジラと2mもないくらいの距離で撮影しています。
でも、僕らはクジラが子育てをしているところに撮影をしに行っているので、基本的に彼らの警戒心は強いです。なので、ある程度近づいたらあとはクジラ側が近づいて来るのをじっと待って撮影しています。こっちから近づいて行くことはありません。

――ずっと身をひそめてシャッターチャンスを待ち続けているんですね。

海の中なのでどこにも身をひそめられないんですけどね(笑)
僕がよく例えるのは「流木のようになる」といった感覚で、ただ浮かんでいる状態です。やはりバタ足の動きとかだけでもクジラは嫌がりますから。これはクジラに限った話ではないですが、彼らにストレスを与えないようするということを最優先で撮影しています。

――岡田さんが水中の生物たちに惹かれるのはなぜなのでしょうか。

水中の生物だから好きというよりは、僕自身が水中に漂う感覚が異常に好きなことが大きいかもしれないです。
最近気づいたんですが、そもそも僕はお風呂も大好きなんですよ。お風呂でも潜ったりして家族に嫌がられたりするんですけど(笑)
顔の周りに水がある感覚が落ち着くんでしょうかね。なので、好きな生き物もいるし、水の中に居られるし、リラックスした状態でいつも最高だなと思いながら撮っています。

――今回発売された写真集「これが君の声 青の歌」こだわりの作りになっていますよね。

そうですね。今回は自費出版なので、紙や印刷などこだわりを詰め込んで自分が好きなものを作ろうと思っていたら、この値段になってしまいました(笑)
でも好評いただいていて安心しています。
一時期写真集とかもデジタルのものが出たりしていましたが、自分で見ていてもやっぱり紙で持っておきたいなと思うんですよ。人にプレゼントしたいなと思うことだってあるし、見え方だって印刷の仕方で変わってきますからね。
それに作品を買って頂いたその人の生活の中に僕が撮った写真があるって、カメラマンとしてこんなに幸せなことは無いですよ。

――写真集を出して、それを携えて展示をしていくのは、なんだかアルバムを出してライブツアーをしていくミュージシャンのようでもありますね。

まさにそんな感じです。リリース記念のツアーを始めるような感覚です。僕は展示の時は基本的に在廊するようにしていますしね。さすがに全日程いることは難しいですけど、全く在廊ができないのであれば展示はやらないかもしれないくらいです。
やはり展示をするのならば作品だけ送るのではなくて、来ていただいた方と話したいと思うし、どういう方が見に来てくれるのかも知りたいですから。これからも展示をするときは、プリントの販売も写真集の販売もすべてセットでパッケージングして色々な展示会場を回っていきたいなと思っています。

【岡田裕介 写真展「これが君の声 青の歌-Sound of echo, Song of Blue-」】
2020/09/29 ~ 2020/10/11
会場:京都写真美術館 ギャラリー・ジャパネスク 2F
時間:11:00〜18:00(最終日17:00まで)
岡田裕介HP
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前回の個展のインタビュー記事はこちら
岡田裕介「Colors ~ペンギン島の物語~」インタビュー

【写真集「これが君の声 青の歌-Sound of echo, Song of Blue-」】
世界の海を潜る中で 8 年に渡り撮り続けてきた、ハワイ島やバハマに住むイルカ、冬の間トンガに子育てにやってくるザトウクジラの写真をまとめた新作写真集。
音楽や文学を感じさせる絵画的な写真表現で魅せる水中の世界。表紙の重厚感、紙の風合いなど装丁にもこだわり、写真集そのものを一つの作品として仕上げた渾身の一冊。