~日本の伝統・能楽に見立てた抽象写真と、福島・吾妻山の自然を見立てた盆栽の共演~
会場に入ってまず目に止まるのが、アシンメトリーに力強い曲線を描く大きな吾妻五葉松の盆栽です。福島・吾妻山に自生する五葉松の景色を手本に作り上げた「空間有美」という作風の盆栽は、老舗ぼんさいや「あべ」三代目の阿部大樹さんが初代から受け継いだもの。盆栽アートとして東京で展示するのは初めてだそうです。
盆栽と並び強烈な印象をもたらすのは、飛行機雲を写したシンプルな構図の写真を能楽作品に見立てた写真作品です。写真家・江口敬さんならではの鮮やかな色彩を使った作品は、「道成寺」「松風」「巴」「高砂」など能楽タイトルが加わることで、見る人の想像力をさらに掻き立てます。
「能楽は日本文化の集大成です。〈高砂〉という言葉一つで、人のイメージは広がるように、日本の表現として昔からある抽象美を目指し、シンプルでいて想像力の広がる作品づくりをしています。盆栽と合わせることで、僕の理想としている世界がより表現できたと思います」
学生時代に能楽サークルにいた経験が、和のものに対する思考につながっているのだと江口さん。背景に自然や風景を見立てる盆栽アートと、風景を能楽世界に見立てた写真作品という、「見立てる」という共通のテーマを持った作品は、どちらも主役でありながらお互いに新しい見方や世界といった魅力を引き出しているのが特徴です。
「色合いや線が印象深い江口さんの作品と合わせることで、既存の盆栽の見たて方とは違う新しい世界を表現できると考えました。実際に会場でお互いの作品を合わせてみて、やっぱり合うなと! 一緒に飾れることが幸せです。愛好家以外の方にも盆栽を見ていただき、その背後にある景色を想像していただけると嬉しいです」と阿部さん。
極限まで抽象化することで能楽世界を作り出した写真作品と、力強い曲線を描きながら風雨の中で根を張る自然樹に見立てた盆栽のコラボレーションを見に、ぜひ会場へ足をお運びください。
本日1月11日(金)15:00から同会場にて、阿部さんによる「吾妻五葉松盆栽作りのデモンストレーション」が行われます。先着20名とのことで、ご都合のつく方は要予約の上、来場ください。
【写真×盆栽 二人展「松・美・心」】
会期:2019年1月10日(木)~1月 12日(土)
10:30~18: 30(最終日は17:00まで)
会場:Art Gallery M84
http://artgallery-m84.com/?p=5490
写真家・江口敬さんのWebサイト
http://eguchitakashi.wixsite.com/photography
ぼんさいや「あべ」のWebサイト
https://peach-bornsai.wixsite.com/kukanyubi