~ ベトナムの女性移住労働者問題を追う女性ジャーナリスト! ~
写真の彼女たちはベトナム・ハイズオン省の農村から、出稼ぎ移民として台湾で住み込みの家事労働に従事した経験のある人たち。
ジャーナリストであり、大学院修士課程でも研究をしていた巣内尚子さんは、主にベトナムの女性移住家事労働者問題に取り組んでいます。きっかけは学生時代にフランスで見た移民への差別。多くの移民を受け入れ、それぞれが市民権を得て社会で活躍しているはずのフランスでなぜ?と違和感を持ったと言います。その後、移民の送り出し側である東南アジアの国々を訪れた際に家事労働者への虐待のニュースを目にし、これは調べなければならないと奮い立ったのだとか。
「ベトナムに滞在し、主に台湾での移住家事労働の経験者である彼女たちへ聞き取り調査をしました。驚いたのは、彼女たちの大半が、契約期間である3年の間、1日も休みがなかったと答えたこと。住み込みという密室化した労働環境下で働く彼女たちは、労働法などの既存の制度に守られていないのです」。
家事や介護など対人労働サービスは休みがなく24時間365日拘束されます。彼女たちは、労働で得た決して多くはない賃金を、ほぼ全額、国の家族へ仕送りしていると、巣内さんは言います。
ベトナムは1990年代以降、外資の投資などを受け、急速な経済発展を遂げてきた国。その一方、国内では経済格差があるほか、経済成長の恩恵を十分に受けられていない人もいます。そうした人の中には、経済状況を改善するため海外に出稼ぎに行く人がいるのです。今回の写真展で取り上げられている女性たちもそうした背景があります。
「彼女たちにとってつらいことは、海外での就労期間中、家族、特に子どもと離れているということです。けれど家族の生活費や子どもの教育費を得るために、移住家事労働という道を選ぶことになりました。移住家事労働を繰り返し、長期間にわたり海外で働く人もいます」。
日本はこれまで、東南アジア出身の女性を「興行」の資格で受け入れたり、外国人技能実習生などの外国人を受け入れたりしてきた経緯がありますが、様々な課題が指摘されてきました。しかし多くの課題が解決されないまま、再び新たな外国人労働者の受け入れが現在進められている。だからこそ、国際的な問題になっている女性移住家事労働者について知ってほしいと考え、調査で撮影した写真を展示することを決めたのだと、巣内さんは教えてくれました。
「日本では以前から多くの外国人が社会の中で暮らしています。外国人労働者を単なる『労働力』としてみるのではなく、私たちと変わらない社会に生きる存在として共に生きていける社会づくりが大切だと考えています」。
期間中はほぼ在廊されているとのことですので、巣内さんの出会った『彼女たち』の話が気になる方や、世界の動きを知りたい方は、ぜひ足をお運びください。
【巣内 尚子 写真展「『彼女を探して』―現代ベトナムと女性移住家事労働者」】
会期:2017年7月17日(月・祝)~23日(日)
12:00~19:00
会場:フォトギャラリー Place M