加藤 文彦 写真展「Stand By Me」

レポート / 2017年8月18日

人の祈りを受け止める写真

加藤文彦さんは英文学の研究者です。これまで数多くの西洋建築を撮影してきました。今回の展示は、日本の神社仏閣・仏像と西洋建築を組み合わせたカラー作品と、モノクロ作品やモノクロに類似する作品がパーテーションで区切られた2つのスペースにそれぞれ展示されています。

ギャリエヤマシタ2号館は、多くのお店が並ぶ寺町通りの商店街にあるギャラリーです。
白を基調としたシンプルな内装は、写真や絵画など多種多様な作品にマッチします。

〈和と洋の調和〉
最大の特徴は、加藤さんの技術により和と洋の宗教・文化が調和されていること。
例えば西洋建築の石柱に日本の仏像を組み合わせたり、日本の仏像二体と西洋の石像一体に寺社仏閣を合成したり。雰囲気が違いすぎて一枚の写真には収まらないように思うかもしれません。しかし実際に見ると違和感は全くなくて、和と洋が上手に調和し一つの世界を構成しているのが印象的です。
また、ソラリゼーションで白黒を反転させた作品は、かなり異様な雰囲気を醸しています。平安神宮を反転させた作品は、砂利の広場が浅い海のような錯覚を起こすほど。
こうした加工がより宗教的で神聖なものに感じられ、Stand By Meのタイトルにとてもマッチしています。実際、加藤さんに説明していただくまで気付かないほど。こうした和と洋の調和を読み取るのも「Stand By Me」を楽しむポイントです。

〈Stand By Me〉
「Stand By Me」は色々な意味を持っていると語る加藤さん。

「お祈りしている人が見えない所にいるのです。“Stand By Me!” は、私を守ってください、味方してくださいっていう意味ですからね。こちら側(作品内では見えない所)に祈る人がいて、そういう声を受け止めるのが仏像や寺院、お寺………龍なんかも、やっぱり受け止める側だと思いますね」。

実際に作品を観ていると、不思議と拝みたい、祈りたいという気持ちが湧き起こります。「助けてほしい。寂しい。だから傍に居て」そうした人々の叫びを表現したのが「Stand By Me」なのだとか。
一方で作品には人物が写り込んでいるものもあり、「私の傍に来て」と願う独りの切ない思いや、「もっと傍に来て。もっと傍に行かせて」とお互いを求め合う気持ちが表現されているように感じます。

仏像や寺院、お寺は祈る人を優しく包み込み、作品の中の人物は他者や神仏の存在を悲しげに求める、何ともな神聖な雰囲気を感じる写真展です。
「Stand By Me」の意味や、和と洋の調和についてご興味のある方は、ぜひ足をお運びください。

【加藤 文彦 写真展「Stand By Me」】
会期:2017年8月15日(火)~8月20日(日)
11:00~19:00(最終日は17:00まで)
会場:ギャリエヤマシタ2号館1階
http://www.e-gaku.jp/hpgen/HPB/categories/9147.html
加藤文彦FBページ
https://www.facebook.com/cateaux0515/