山下 裕之 写真展「シュンメトリア―symmetria―」

レポート / 2017年8月31日

人工光で撮るシンメトリーの建築構造物が魅せる機能美!

熊本出身の山下さん。くまモンのように気さくに話してくれるのに甘えて、夜景を撮るコツを根掘り葉掘り聞いてしまいました。

2つのスペースをふんだんに使って展示されているのは、人工光で撮った都市の夜景です。そこにあるのは、東京タワーやレインボーブリッジ、有明スポーツセンター、金沢駅など人工物が生み出す造形美と機能美です。
光跡を使った夜景を撮りたいとカメラの道に進んだ山下裕之さん。フォトグラファーとしてフリーで活動する一方で、都市の夜景をテーマにした作品づくりを続けています。都市の建築構造物の美しさを意識するようになったのは2011年の東日本大震災がきっかけだと言います。

「東日本大震災後に、耐震補強などの関係で建築構造物が壊されることを知り、このすばらしい機能美をもつ建築構造物の記録を残す必要があると考えたのが、シュンメトリアシリーズの始まりです」

会場には左右対称(シンメトリー)で構成された建築物の美しさをテーマに厳選した約40点が展示されています。
山下さんはシフトレンズを使って画面の歪みを補正し、露光を調整して人工光で撮影することで、陰影のない無機質で不思議な世界を表現しています。
ベストな撮影タイムは深夜の12時から夜明けまで。そのため、仕事の合間をぬってロケハンし、人の動きや天気の状態、季節、ライトアップの状況などを緻密に計算して撮影にのぞんでいます。しかしそこまで準備しても車や人が往来したり工事のライトが入るなど、思い通りの作品を撮れるのは全体の1割以下なのだとか。

「東京タワーを撮影した時は、ライトアップされていないタイミングを見計らってカメラを構えました。ちょうど流れてきた雲が対称的な形をつくっていて…あの時は胸が高鳴りましたね。他にも、レインボーブリッジは夜の帳が落ちる薄暮の時間を狙って撮ることで妖しい色彩が生まれました」

ことばの選び方がとても美しく叙情に富んでいて、山下さんの“美学”が伝わってきました。
ちなみに、暗闇に独りで撮影するのが楽しいという山下さん。カメラを掲げて深夜の街を一人で練り歩くため、よく職務質問に合うのだと、撮影の笑い話をしてくれました。「治安を守ってくれていることに感謝ですよね」なのだそう。

「写真を見るというより、ゆっくり休憩をしていってください(笑)。そのために、会場には自前のソファを準備しました。これからも都市の夜景を撮り続けると共に、台湾や香港など海外の夜景も撮ってみたいですね」

中央のソファは、来郎された方が腰を落ち着かせられるようにと、自前のものを搬入したそう。
山下さんらしい心配りです。

会場に設置している自前のソファに腰掛けて。背景に飾っている東京タワーの作品は、雲の模様が絶妙な一枚! 山下さんの一番のお気に入りだそう。

2つのスペースのうちの1つには、2年前に撮った映像作品「夜光都市」と、同じテーマでカメラ雑誌「デジタルカメラマガジン」の連載用に撮影した作品が展示されています。夜景の撮影ポイントやコツなどを知りたい方は必見です!

会期中は毎日在廊されているとのこと。ぜひ会場に足を運び、人工光が映す都市の建築構造物を見ながら心を休めてみてはいかがでしょう。

【山下 裕之 写真展「シュンメトリア―symmetria―」】
会期:2017年8月31日(木)から9月5日(火)
10:00~19:00(最終日は16:00まで)
会場:ヒルトピア アートスクエア
http://hilartsq.com/schedules/fairs/index.html