吉田 裕之 作品展「イデア ―eye of the heart」

レポート / 2017年9月26日

心の目に映るモノの本質をとらえた鮮やかな世界!

「イデア」とは哲学者プラトンが唱えた学説で、現実の目では見えない、モノの本質を映した世界(理想)のこと。
吉田裕之さんは30年以上にわたり雑誌や広告業界で活動してきたフォトグラファーです。昨年に病気をしたことで、表現者として最後にできることは何かと考えるようになったそう。そこで浮かんだのが、大学を辞めた時に写真を使って表現をしたいと思っていたこと。当時はまだこんなデジタル時代が来るとは思っていなかったそうですが。

「色に対しての感覚が身に付くことになったのは、2歳8カ月でのグアム旅行がきっかけでした。目に映るもの全ての色が新鮮で。帰国後もその色彩が頭の中にあり、毎日グアムの海と夕日の絵を描いていました。その頃、宮大工でもある建築家の祖父から『影の中にある色』の手ほどきを受け、影の中にもいろいろな色が存在していることを知り、ものの見方の変わった子ども時代を送ることとなりました」

「細部まで表現することが大切です。浮世絵にオマージュを受けていますね」と話す吉田さん。色の面と線に置き換えることで、構図のバランスを判断することもできるそう。

会場には、鮮やかな色彩で街の風景が表現された20点のプリント作品と、200点近い作品からなる映像が展示されています。
Sony α7R IIカメラを手に街歩きをしながら面白いと感じた瞬間を撮影し、その後にパソコンで色調補正を調整してつくるのだそう。作品に表れるのが、吉田さんの心の目が見たモノの本質です。

普段見ている風景が、トーンを変えることで違った見方ができるのだと言います。「電柱やゴミなど、作品の撮影では排除するようなモノが、あるがままの状態で画になります」と吉田さん。

「心の動きが色彩に表れるんですよ。嬉しい時、子どもを叱った後などで全然違う(笑)。同じ色をもう一度つくろうとしてもつくれません。撮影時の前向きな気持ち、元気に向かっていく気持ちが伝わればうれしいです。つくり方を知りたい方は気軽に聞いてください。写真を使った新しい表現を、一緒に楽しみましょう!」

アートは進歩と進化の中で柔軟に遊んでこそ次の世界が開ける、と吉田さんは考えています。今後は日本全国の風景をはじめ、グアムやハワイ、台湾、タイ、ヨーロッパなどをまわり、自分が見つけたイデアをつくっていきたいと話してくれました。

吉田さんのこれまでの写真展とは一転した世界観を見たい方、写真表現の多様さを感じたい方は、ぜひ会場へ足をお運びください。

【吉田 裕之 作品展「イデア ―eye of the heart」】
会期:2017年9月15日(金)~9月28日(木)
11:00~19:00
会場:ソニーイメージングギャラリー
https://www.sony.co.jp/united/imaging/gallery/detail/170915/