藤田 修 個展「noise」

レポート / 2019年1月10日

~イメージの本質をとらえたフォトポリマーグラヴュール作品~

会場にて。「版画や写真といった枠組みではなく、美術の歴史を学んだり、美術史に残っている作品を見るなど、ビジュアルにおける全てを勉強することが大切です」と藤田さん。写真の持つ再現性ではなく、イメージの本質をとらえることが作品づくりには重要なのだと話してくれました。写真と美術という垣根を分けるのではなく、ビジュアルアートの中の写真という位置付けで作品づくりをしていくところに、質の高い面白いものが生まれるのではないかとのこと。

吉祥寺駅南改札(公園口)から徒歩7分、井之頭公園に続く吉祥寺通り沿いのビル地下1FにあるGallery 惺 SATORUは、現代作家を中心に様々なアート作品を取り扱っているギャラリーです。

会場では、フォトポリマーグラヴュール作品を中心に、エンボス作品、モノタイプ、立体作品など約20点が展示販売されています。中でも今回の個展に合わせて制作された「noise」シリーズは、敢えてノイズやドライポイントを加えることで、イメージの本質や物質感を表現。雁皮刷りのフォトポリマーグラビュールならではのマチエール(素材感や物質感)が、豊かな表情を作り出しています。

今回の展示に合わせて、ノイズを加えて刷り上げた作品「noise」。
藤田さんの作品は、紙やインクの粒といった物質感(マチエール)が伝わってくるのが特徴です。そのため、ギャラリー会場では額装せずに裸のままで展示されています。

藤田修さんは、これまでに数々のビジュアルアート作品を発表してきた版画家です。イメージの本質を表現しようと試行錯誤する中で、1970~80年頃から客観性のある素材として写真を扱うようになったとのこと。フォトエッチングやフォトポリマーグラヴュールなどの版画技法を用いた作品は、様々な美術館に収蔵されるほどです。近年は写真フィールドからのオファーが増え、代官山フォトフェアにも出展するなど活躍の幅が広がっています。

「ぜひギャラリーに来て、現物を見てほしいです」と藤田さん。こちらは通常のフォトグラヴュール作品です。写真向かって右の作品「girl」を見ると、精緻に再現する写真とは異なる、円やかな魅力が表現されています。

「noise」シリーズ。

「いろんな情報が飛び交い、高音質の音楽や高画質の写真など隅々まできれいなものが当たり前の現代において、本当に必要なものはもっとシンプルだと考えています。たとえば子どもの頃、トランジスタラジオで聞くノイズ混じりの音楽に胸をときめかせ、網点のある粗く小さな新聞写真に感動したように。本質を表現したものは人の心を動かすのです。どう写るかではなく、どう表現するかをこれからも追求していきたいです」

藤田さんのいう「イメージの本質」が気になる方、写真や版画という枠組みを超えたビジュアルアートの世界に興味のある方は、ぜひ会場へ足をお運びください。

画面上にある傷はドライポイントという版画の技法。傷線に残ったインクが独特の質感を出しています。

また、古典技法によるモノクローム作品を取り扱っているMonochrome Gallery RAIN(池尻大橋)で開催される企画展でも、藤田さんの作品が展示される予定だそうです。ご都合のつく方は併せてお楽しみください。

【藤田 修「noise」】
会期:2018年12月22日(土)~2019年1月13日(日)
12:00~19:00(最終日は17:00まで)
会場:Gallery 惺 SATORU
http://gallerysatoru.com/

【M.G.RAIN SPRING SESSION 2019 vol.1】
会期:2019年2月2日(土)~3月3日(日)
14:00〜19:00(開廊は土日のみ)
会場:Monochrome Gallery RAIN
https://monochromegalleryrain.com/

藤田さんのWebサイト
fujitaosamu.com