谷田 梗歌 写真展「境界」

レポート / 2019年1月9日

~海と陸の境界を切り取った抽象的な世界~

会場にて谷田さん。ギャラリーディレクターの佐野さんと相談して、目線より下に水辺がくるよう作品を低めに展示しています。 「氷の写真は冬場がメインとなるため、それ以外の季節で感覚を鈍らせないように撮り始めたのが尾道とおり道など他シリーズのはじまりです」と谷田さん。

谷田梗歌さんは、氷をテーマにした独自の世界を展開する写真作家です。10数年にわたり氷の写真を撮り続け、コントラストシリーズ、ICE Shadowシリーズといった代表作を生み出しています。また、もう一つの自身のテーマとして尾道とおり道シリーズを展開。今回の「境界」は、尾道シリーズのスピンオフであり、かつ新シリーズの起点ともなる作品展だと教えてくれました。

尾道シリーズの撮影で年に数回訪れた際に、岩子島という小さな島まで足を伸ばし、作品を撮りためてきたそうです。新シリーズとしてどう展開していくか構想しながらの第1弾とのことで、今後が楽しみな作品です。

「かつて港町として栄えた尾道の小さな島の砂浜で撮影した作品です。海は外界への入り口であり、外界との接点でもあります。そうした性質を頭の片隅に置き、海と陸の境界、内と外の境界といったイメージを構成しました。この境界シリーズが今後どう展開するか想像しながら見ていただきたいです」

会場には大型プリント10点をメインに、手頃な中小サイズの作品も展示販売されています。「究極までに単純化することで別の景色が見える。それが抽象性につながります。ぜひ皆さんの考える〇〇と〇〇の境界を聞かせてほしいです」と谷田さん。静かに寄せる波が描く境界線はコントラストシリーズに通じるものがあり、海と陸の境界でありながら、空と山の境界や動と静の境界のようにも見える抽象性があります。

時々で形を変える境界線は、人間が勝手に決めた枠組みや固定概念といったものに縛られず、自由に外界と接し取り入れることで新しい何かを生み出すことを喚起しているようにも感じます。

スペースの奥には、お手頃価格の中小サイズ作品も。大型作品の迫力と中小サイズの抽象性の両方を楽しめます。

作品に表現される一貫した抽象性は、見る人によってさまざまな境界を連想させるのではないでしょうか。気になる方はぜひ会場へ足をお運びください。

【谷田 梗歌 写真展「境界」】
会期:2019年1月8日(火)~1月13日(日)
12:00~18:00(金曜日は18: 30まで、最終日は16:00まで)
会場:SAN-AI GALLERY +contemporary art
https://san-ai-gallery.com