~針穴が捉えたグラスに映る光/写真古典技法と日本の陶芸技術の融合作品、2種類の現代アート写真~
清澄白河駅から徒歩3分にあるSAKuRA GALLERYは、絵画や造形、インスタレーションなど現代アートの発表の場として多くのアーティストを取り扱っている老舗のギャラリーです。現在開催しているのは、現代アートに精通したギャラリーらしい二人の写真家による企画展。
会場を二分するように二人の作家による、針穴カメラでグラスに映る光をとらえたカラー作品16点と、写真と陶芸を融合させたフォトセラミックによるモノクローム作品20点が対比的に展示されています。
フォトセラミックとは、西洋の写真古典技法と日本の伝統的な陶芸を融合させた、写真家・土居慶司さんによるオリジナル作品です。これまで日本やアメリカなど国内外で8×10のモノクロ銀塩プリント作品などを展示してきた土居さん。独自性を追求し、2012年頃よりカーボン・トランスファー・プリントという19世紀の古典技法である転写技術を用いた作品を発表するようになったそう。今回展示しているのは、この古典技法を使ってタイルなどのセラミックプレートに写真を転写し、窯で焼成した陶製の写真作品です。転写の感材として陶芸用の釉薬を使うことで、伝統的な絵付け磁器と同じように半永久的に劣化しないと言います。
写っているのは植物やシンプルな建物など。陶器のガラス質に覆われた陰影が味わい深く、温かみを感じます。とはいえ、土居さんにとって技術はあくまで表現の手段とのこと。
「目指しているのはミニマリズムです。モノクロームという表現もその一つ。色や形を削ぎ落としていくと、最後に残るのは〈光〉です。光は生物や地球、宇宙にとってのエネルギーとなる根源的なもの。そのエネルギーを抽象的に表現した作品を発表することで、観た方の感動につながればと考えています」
写真家の大木靖子さんの作品は、針穴カメラでグラスに映る世界を捉えた幻想的なイメージが特徴です。ある時、グラスに入った氷が虹色にゆらめいている光景が目に留まり、好奇心から針穴カメラ(ピンホールカメラ)で撮ったのがきっかけだそう。2008年頃から撮り始めたこのシリーズは、普段の生活の中で使うグラスをその場の自然光で写しています。カッティングや水の揺らめきがつくる曖昧な光彩は、見ているだけで心が明るくなります。
額装されたオリジナル銀塩プリントのほかに、ミニフォトアクリル版の小さめ作品も展示されていて、グラスに入った液体越しの世界がより楽しめる工夫がされています。
年内の展示は本日が最後(冬期休廊のため)ですが、年明け1月9日(水)から19日(土)まで展示されているので、ぜひ作品を見に会場へ足を運び、現代アート写真の魅力を楽しんでみてはいかがでしょうか。
【二人展・大木 靖子「グラスのなか」/土居 慶司「光をさがして」】
会期:2018年12月21日(金)〜2019年1月19日(土)
12:00~19:00(最終日は17:00まで)
会場:SAKuRA GALLERY(月・火定休)
http://kiyosumi-gallery.sakura.ne.jp/ht…/2018shashinten.html
土居さんのWebサイト
https://keijidoi.wixsite.com/fine-art-photography
大木さんのWebサイト
https://blog.goo.ne.jp/noraterrier