叶 悠眞 写真展「會津」

レポート / 2017年10月3日

五季折々の「會津」!

航空写真家として活動している叶悠眞さん。普段みる風景とは全く異なる、上空からの景色や造形的なおもしろさに魅せられ、これまでさまざまな地域の航空写真を撮ってきました。「會津」と出会ったのは、尾瀬の草紅葉を空撮するために会津からヘリコプターに乗ったことがきっかけだと言います。

「昨年は、僕の出身地・熊本で地震がありました。そこで、熊本城の空撮とその写真展をしました。3日後、2週間後、1カ月後…と定期的に飛びましたね」と、叶さん。写真は、霧と鶴ヶ城。

「空の上から見た会津は、美しい秋が広がっていました。興味を持って会津の人たちに話を聞くと、鶴ヶ城や古い町並みなど会津独特の歴史や文化が今も残り、自然も豊か。しかもひとたび心を開くと義理人情に厚い人たちばかり。そうした会津の魅力に惹かれ作品づくりのテーマにしました」

福島県・会津地方は一年の4割が雪で覆われるほど雪深く、春の訪れと同時に人々は農耕を始めます。会津米はブランド米として有名で、その米を使った日本酒造りに拘る酒蔵があるなど、文化・伝統工芸が盛んです。
春になると鶴ヶ城には千本以上の桜が咲き誇り、秋には真っ赤な紅葉が山肌を覆う。11月には放射冷却で霧が立ち、雲海ができる。会津まつりでは鶴ヶ城での出陣式を経て武者姿の人々の行列が街を練り歩きます。

酒蔵(左)、大内宿(中央)など。「酒蔵では、すごくこだわった酒造りがされている。僕は会津の撮影で初めて日本酒の魅力を知りました」。この地域では、洋食のレストランでも、ワインではなく日本酒をグラスに入れて飲むのだそう。

満開の桜と鶴ヶ城。空撮の場合、木の上部分の花が咲く散り際の方がきれいに映るのだと言います。

冬の磐梯吾妻ライン(左)、吾妻小富士と桶沼(左から2枚目)など。会津は、福島から山を2つ3つ越えた先にあり、西の新潟からの風が吹いているそう。

「会津は春夏秋冬の四季にプラス霧の季節がある、とても素敵な地域です。しかし旅行者を対象とした日本の城ランキングでベスト20に入っていない。東日本大震災後の風評被害で観光客が減少しているからなんですね。だから僕が鶴ヶ城の写真を撮って東京と大阪で展示することで、観光客を呼び戻したいんです!」

霧と鶴ヶ城(右)と、会津の職人・蒔絵師の姿を写した作品(左)。「11月から12月上旬にかけて、会津は霧の季節になります。会津には四季ではなく、五季があるんですね」と、叶さんは言います。

会津まつりの写真2000枚をコラージュ。遠目に見ると、鶴ヶ城のシルエットが浮かぶ工夫が。まわりの作品は、コラージュに使われているものなど。

3つのスペース全てを使った広い会場には、大小の作品77点が並びます。最大の見どころは畳サイズのパネル3枚を使った鶴ヶ城の作品2点です。また、会津まつりの写真2000枚以上をコラージュした作品は、遠目に見るとお城のシルエットが浮かんでくるという手が込んだつくりになっています。
他にも、空の上から見た会津の町並みや田んぼ、電車、猪苗代湖や五色沼など、ここでしか見られない「會津」の魅力が満載です。

今後は上空だけでなく、地上で「會津」の文化や職人さんなどの取材・撮影をしていきたいと話す叶さん。ぜひ会場へ足を運び、叶さんの目に映る五季折々の「會津」を楽しんでください。

田園地帯を走る電車(左)、上空から見た猪苗代湖(中央)、紅葉シーズンの会津(右)など。「上空から見ると、湖の形や波、光など、これまで見たことのない光景が見えるのが良いですね。山も離れて見ることで、秋色が少しず
つ移っていくのが分かる」と、叶さん。

写真集「會津」を手にポーズをつけてくれました。3つのスペースを使い、大きな作品を配置したダイナミックな展示です。「東京・大阪の後は、会津でも展示をする予定です」と、叶さん。

【叶 悠眞 写真展「會津」】
会期:2017年9月29日(金)〜10月5日(木)
10:30~19:00(最終日は14:00まで)
会場:富士フォトギャラリー銀座
http://www.prolab-create.jp/gallery/ginza/

富士フォトギャラリー大阪
10月12日(木)〜10月18日(水)
10:00〜19:00(土日10:00〜18:00、最終日は15:00まで)