安達 ロベルト 写真展「SONIC」

レポート / 2018年12月13日

~木版画のように深く軟らかなトーンが奏でるSONIC~

会場にて安達さん。バックに展示されているのは、安達さんが写真の道に進むきっかけになった一枚。音楽活動の一環であるWebサイトに自分の写真を使っていたところ、雑誌編集者さんに「毛色の違う作品を載せたい」と声を掛けられたそう。ちょうど写真やカメラにのめり込んでいた時期だったこともあり、写真家としても活動を始めたと言います。この作品だけ印画紙が違うそうで、日の光がゴールドに輝いているのが印象的です。

2室が連なった会場には、ゼラチンシルバープリント作品と映像作品が展示されています。リスプリント(Lith Printing)という技法を使って表現された作品は、まるで木版画のよう。シャドウ部分はどこまでも深く黒く、ハイライト部分はやわらかい光をたたえたトーンが特徴です。

リスプリントのために撮影した作品で、モノクロフィルム用のレンズで撮ったそうです。木版画のようなトーン表現が面白い。「ネガを選ぶ際に、音が聞こえるものを選びました」と、安達さん。

「化学反応で生まれるローファイなトーンが好きですね」と話す、安達さん。しっかり色のしみ込んだシャドウ部分と、少しかすれた風合いが柔らかい印象を出すハイライト部分のコントラストが素敵です。

安達ロベルトさんは、写真家であり音楽家でもあるアーティスト。「写真のシャドウとハイライトの関係は、音の高音と低音の関係に似ています」と言うとおり、作品を見ていると、明暗のコントラストが不思議なリズムを奏で、様々な音が聞こえてくるような気がします。
安達さんが作品づくりで大切にしているのは、自問自答するプロセス。具象を写しながら抽象を写しているのだそうで、時間や場所といった概念を超えた光景が画面に広がっています。

ギャラリーカメリアでは、安達さんの写真講座が開かれています。「講座では技術を教えるのではなく、受講生の方が自問自答するプロセスを大切にしています」と安達さん。どんな課題を出しているのか聞いてみると、「自分にとっての抽象的な何かを考えて定義し、写真にして撮ってくる」という、なかなかに高難度でつくりがいのあるテーマのようです。会場には生徒さんも来廊されていて「作品を見て、先生がおっしゃる意味が分かりました!」と感動していました。

「曖昧に逃げず、自問自答するプロセスが大切だと考えています。私にとっての抽象表現は何かということを追求していったところに、モノクロフィルムをローファイで撮るという表現に突き当たりました。自己表現というよりは、俳句に近いでしょうか。シンプルな情報で見る人がいろいろ解釈したり連想したりするきっかけになればと考えています」

会場には、限りなく静止画に近い映像作品も展示されています。「運が良ければ鳥が飛ぶ姿が映ります」と、安達さん。表現の一つとして、映像の分野にも活躍の場を広げています。

来年の2月と3月に展示を控えているそうで、今は準備に奔走しているとのことです。ローファイとリスプリントが創り出した作品を見に、ぜひ会場へ足をお運びください。

ネイチャーをテーマにした安達さんの写真集。会場では、プリント作品や写真集が展示販売されています。

12月23日(日)19:30から、SONUS ギャラリーライヴ Soundscape Liveがあるそうです。

【安達 ロベルト 写真展 Solo Exhibition "SONIC"  】
会期:2018年12月11日(火)〜12月25日(火)
12:00~19:00(最終日は17:00まで)
会場:ギャラリーカメリア
https://www.gallerycamellia.jp/

安達さんのWebサイト
http://www.robertadachi.com/