水木 喜美男 写真展「washigraph Ⅱ」

レポート / 2017年11月9日

和紙と写真のコラボで山水画の世界観を表現する「和紙グラフ」!

山水画や浮世絵、リトグラフの世界を、写真で表現しようと長年作家活動をしている水木喜美男さん。辿り着いたのが、リトグラフのように調整した写真作品を和紙にプリントするという新しいジャンルです。水木さんが所属する和紙文化研究会のメンバーより命名された「和紙graph(グラフ)」は、作品展のタイトルにもなっています。

フレームにもこだわりがあり、中央の作品は水木さん自前の木枠を使用。「木を素材とした和紙を使っているからには、フレームも木製にこだわっています」と水木さん。細部までこだわりが詰まった作品です。右の作品は来廊者から人気が高いそう。埼玉・長瀞の水辺を写したもので、夕日に染まるピンクの雲と空の青、水面に映る水草の影が絶
妙。

撮影場所は、埼玉・長瀞(ながとろ)の渓谷や山野、牡丹(ぼたん)など。被写体を前に、どうすれば山水画のように見えるかと構図を考えながらひたすら撮るそう。
プリントする和紙にもこだわりがあり、福井・越前の老舗和紙製紙所が写真プリント用に開発し、海外でも評価の高い三椏局紙(みつまたきょくし)などを使っています。色の出方や質感など和紙本来の生かし方を研究してきたとの言葉どおり、濃い色は沈み淡い色が際立ち、あるいはインクの擦れが版画のような風情を醸し、何とも言えない独特の世界観が表現されています。

「自分の好きな浮世絵や山水画の世界観を、写真を加工することでつくれないかと考えたのがきっかけです。8年ほど前から取り組みはじめ、イメージ通りのものができるまでは試行錯誤の連続でした。あくまでも写真の世界を残しながらの、和紙グラフの世界です。例えば、山林に立つ霧の存在を消さないように山並みのラインを出すなど、素材を生かす方法を常に模索しています。写真家が発展させた版画調の写真アートの世界を、楽しんでいただけると嬉しいです」

会場には、16点のプリント作品と、4Kモニター作品が展示されています。
展示期間中はほぼ在廊しているそうなので、和紙グラフに興味を持った方は、ぜひ会場へ足をお運びください。従来の写真表現の枠にとどまらない、新しいアートの世界を楽しめます。

入口すぐのコーナーには山水画の世界観を表現した写真作品。水辺や山林などの被写体が、少ない色数で表現されています。

右手前の白牡丹は注目の作品です。背景の濃緑色が和紙に沈むことで、牡丹の白色が際立ちます。左の2作品は版画をイメージ、右はリトグラフをイメージした世界観。

山際に立つ霞や、打ちつける波など、被写体の質感と和紙の素材感が生かされています。

【水木 喜美男 写真展「washigraph Ⅱ」】
会期:2017年11月1日(水)~11月11日(土)
10:00~18:30
会場:EIZOガレリア銀座(日・月定休)
http://www.eizo.co.jp/galleria/ginza/event/