増田 伸也 作品展「花札装束」

レポート / 2017年11月24日

食材への感謝と、仕送りしてくれる故郷の母への感謝を表現!

作品の前で、増田さん。「段ボールの底にあったので、四角い形をしています。これを見た時に、段ボールが棺のように見えたんです」と増田さん。

増田伸也さんの代表作「花札装束」シリーズは、傷んで役目を終えた食材を、花札風に装飾した作品です。被写体は全て故郷の母親から送られてきた食材で、どうしても食べきれずに箱の中で腐ってしまったもの。傷んだ食材への感謝と弔いの気持ちを込めて、色とりどりの花々や短冊で華やかに装飾しています。
風雅を感じる構図や色彩は、元料理人の増田さんならではのセンス。料理皿への盛り付けのような絶妙のバランスで、観る人の目を楽しませます。

「still life(静物)を撮るようになったのは、傷みやすいモノを送ってきた母への怒りからなんです。良い歳をした僕への過度な愛情が負担だった。当初は飾り立てずにそのまま撮影していましたが、撮らされているような感覚がつきまとい、写真へのストレスを感じていました。自分も作品に参加したいとの思いが強くなっていった。そのような時期に、亡き祖母の口癖だった『形あるものはいつかなくなる』という概念が頭をよぎった。僕も母も歳を重ね残された時間が減っていく中で、役目を終えたモノへの感謝、送ってくれる母への感謝が沸いてきました。今では、納棺師(のうかんし)のような気持ちで、朽ちた食物を美しく粧飾して送り出しています」。

会場には、花札の枚数と同じ、48点の作品が並びます。カボチャやサツマイモ、京人参、ゴーヤ、ラディッシュ、ローリエ、パセリにローズマリー、山田ミカンまで。母が送る愛のバリエーションの豊富さに驚きます。ビジュアルの違和感と、母に対する感情のギャップが肝だと、増田さんは話してくれました。

会場全景。メインは、冬中夏草(とうちゅうかそう)のような姿になってしまった京人参(金時ニンジン)。一方で背景にある花は送り出すためのものなので、新鮮で美しいもの。このギャップがすごい。

故郷からの仕送り品を腐らせてしまった苦い経験のある方は、ぜひ会場へ足を運び「花札装束」をまとった姿をご覧ください。「おやっ?」という驚きと同時に、朽ちてもなお美しくある食材から“生命力”を感じてみてはいかがでしょう。

バリエーションが豊富な食材を見ると、母の愛が伝わってきます。「写真を撮らされているような感覚にストレスを感じていました。僕が関わりたい、僕が作品をつくりたいと悩んでいたとき、藤城清治さんの作品展を観に行く機会がありました。それを見て、僕も作品に参加しなければ!と思い至り、作風がガラッと変わりました」。

会場内には、花札がディスプレーされています。花札をデザインしたお酒は、スタジオ時代にお世話になった方からの差し入れだそう。

【増田 伸也 作品展「花札装束」】
会期:2017年11月17日(金)~11月30日(木)
11:00~19:00
会場:ソニーイメージングギャラリー銀座
https://www.sony.co.jp/united/imaging/gallery/detail/171117/