道原 裕 写真展「中有(ちゅうう)」

レポート / 2017年11月27日

街の中に潜む「中有」の存在!

「中有(ちゅうう)」は中陰(ちゅういん)とも言い、死んでから次の生を受けるまでの期間を指す仏教用語です。この概念を知った道原裕さんは、自身が撮り溜めたストリートスナップの中で形のなかった作品が、「中有」というテーマで構成できるという確信を得たそう。
会場に展示されているのは、虫のようなモノが潜むひび割れた壁や、モンスターのような姿を形成する劣化シートなど、目にとまった瞬間に驚くようなモノクロ作品31点です。人の行き交う街の人工物の影に身を潜めて過ごす何かの存在は、不気味さと同時に切なさを感じます。

展示期間中も、朝から街を撮っているそうです。
向かって左壁から展示作品を見ていくと、徐々に「中有」の世界観に引き込まれます。

「生き物の姿を借りて絵づくり、構図づくりをするのが僕のスタイルです。焼けぼっくいの中に『中有』を見出した人がいることを知り、僕のモノの見方が許された気がしました。これまで自分の中にドロドロと溜まっていた澱(おり)がようやく固まり、作品となって排出することができました。一番伝えたいのは、写真に撮ることで、自分のモノの見方や深層心理について思惟できること。展示作品には僕の心象心理が表れていますが、皆さんには自由に観てもらいたいです」。

中有を焼けぼっくいに例えるように、想像することは自由だと安心したと話す道原さん。ぜひ会場へ足を運び、道原さんの考える「中有」の姿を前に、命について思惟してみてはいかがでしょう。もちろん、ドキッとしたい方にもピッタリの展示です。

会場全景。

【道原 裕 写真展「中有(ちゅうう)」】
会期:2017年11月17日(金)~11月30日(木)
10:30~18:00
会場:エプソンイメージングギャラリー エプサイト