嶋田 篤人 個展「待つ」

レポート / 2018年11月28日

房総を撮り暗室で現像することの繰り返しから自分を探求した作品

第一回GSSフォトアワードのグランプリ受賞など、銀塩写真にこだわった作品づくりを続けている写真家の嶋田篤人さん。写真家の道を選んだのは、写真を通して自分が自分であるというオリジナリティを探求したいという思いから。

その方法として嶋田さんは、同じことを繰り返すサークルの中で無意識の根底にある自分がにじみ出てくると考えたそうです。千葉・房総半島を歩き廻ってモノクロフィルムで撮影し、暗室で現像することを繰り返す。その中で生まれたのが「待つ」というキーワードです。

中央の作品はDMにも使われるほど思い入れのある一枚。房総の崖で遊ぶ子どもの姿をとらえています。「何度もよじのぼって足場を崩す様がまるで地球と戦っているように感じました。僕も子どもの頃は田舎の畑で遊んでいた。今僕は写真を撮っているけれど、あの時のままなんじゃないかなと思います」と嶋田さん。

「〈待つ〉とは、どこかへ能動的に向かっていくことと表裏一体だと考えています。房総を巡って何かを探しているけれど、同時に何かを待っている。撮影のタイミングを待つ、暗室で像が出てくるのを待つなど、写真は〈待つ〉ことを繰り返すサークルです。サークルの中で待つことで、写真と実世界とのズレが豊かに発酵し、写真の生命観(オリジナリティ)が研ぎすまされていくんじゃないかと思います」

会場の様子。「今の時代は、何かを〈待つ〉ことが少なくなったと思います。でも、待つことで得られたものが昔はあったはず。待つことに価値がある、待つことで発酵していく豊かなものがある、そういうものを作品から感じてほしいです」と嶋田さん。

会場の様子。「これからも基本的には同じことを繰り返していきたいです。オリジナリティを房総で撮れていれば、他の土地を撮ってもフィードバックされるものがあるはず。どこを撮っても自分は自分と言えるレベルに行くまで精進ですね」と嶋田さん。

自然や景色の中にある人の存在は、嶋田さんが感じている〈待つ〉ことへの姿勢を投影しているのかもしれません。
会場には、モノクロームの銀塩ならではの階調で表現された20点の作品が並びます。作品が気になる方は、ぜひ会場へ足をお運びください。12月1日(土)は16時〜、2日(日)は終日、在廊されているそうです。

【嶋田 篤人 個展「待つ」】
会期:2018年11月22日(木)〜12月2日(日)
12:00~20:00(最終日は17:00まで)
会場:Alt_Medium(水曜日休廊)
http://altmedium.jp/#Exhibition