角田 和夫 写真展「哀糸豪竹」

レポート / 2020年2月8日

~緻密に構成された展示と作品の持つ力によるハーモニーに魅了される写真展~

銀座4丁目交差点のシンボル、三愛ドリームセンターの8Fにある、ラウンジスタイルのギャラリーとして親しまれてきたリコーイメージングスクエア銀座が、新宿と統合され2月29日で営業を終了されるとのこと。最後の個展となる写真展にお邪魔し、ディレクターの池永さんとゼータイメージ社長の村山さんにお話を伺ってきました。

今回の写真展は、その池永さんと角田さんのエージェントをされているゼータ イメージの村山さんのお力により実現できたとお聞きしました。恥ずかしながらタイトルの「哀糸豪竹」(あいしごうちく)を知らず、杜甫の漢詩を語源とする、哀しい音を出す琴と、力強い音を出す竹笛が奏でる音色が人の心にしみ渡るさま、という意味だそう。

プロフィール

角田さんの作品を真に鑑賞するには、彼自身を知ってほしいと、二つの言語で本質理解を促したというステートメントをいただきました。少年時代から対人関係の悩みがあり、就職した職場でのいじめ、敬愛する父の死去と苦悩に満ちた人生のなか、写真に真摯に取り組み世界へ作品発表の場を広げていったとのこと。

ステートメント①

ステートメント②

展示されている作品は、67歳で他界した父へ捧げた、現在67歳の角田さんの存在証明というべき集大成となる5つのシリーズから選ばれた42点。第11回 林忠彦賞を受賞した「ニューヨーク地下鉄ストーリー」。シベリア抑留者だった父の足跡をたどった「シベリアへの旅路―我が父への想い」。ゲイである叔父をテーマにした「土佐深夜日記」。フィリピンのデ・ラ・サール大学で教鞭をとっていたときに、過酷な環境下でも希望を失わないストリートチルドレンに心動かされた「マニラ深夜日記」。アルル国際写真フェスティバルで訪れた南仏がきっかけとなった「ゴッホ」。

会場では写真集も販売されています。

展示から、写真カテゴリーによる並びと、写真キャプションによる情報を排し、写真から感じることのできる角田さんの心音を、空間という楽譜の中で再配列した、「哀糸豪竹」というテーマに相応しい展示構成を実現した、とお聞きしました。角田さんの作品と共鳴する実際のピアノ曲(橋本奈緒子さん作曲)を作品の背後で流した写真展では、被写体への優しい視線と見るものへと訴えかける強さ、その両面が多重奏となって心奥深くまで響きます。

ゼラチン・シルバー・プリント、デジタル・ゼラチン・シルバー・プリントとピグメント・プリントの精緻で美しい作品、ぜひじっくりと間近で見てほしいです。会場へ足をお運びください!

【角田 和夫 写真展「哀糸豪竹」】
会期:2020年1月22日(水)~2月9日(日)
11:00~19:00(最終日16:00まで)
会場:リコーイメージングスクエア銀座(火曜定休)
http://www.ricoh-imaging.co.jp/japan/community/squareginza/schedule/event_detail_70.html