安達 元彦 写真展「スパークする記憶」

レポート / 2020年7月21日

~潜在意識下の記憶を呼び覚ます、衝撃はらむ狂気~

会場にて、安達さん。

5年前、写真家の山本学氏に師事したことをきっかけに、本格的にカメラと向き合い始めたという安達さん。安達さんの創作活動の根底には、山本氏からの「誰もが撮るようなベタなものではダメだよ」との教えがあるそうです。その教えを体現するように、今回の写真展には、まさに他に類を見ない作品の数々が展示されています。一見、不気味ですが、脳裏に焼き付くような中毒性が秘められた作品からは、展示タイトルにもなっている、見る者の記憶をスパークさせるような衝撃も感じられます。

――「スパークする記憶」という展示タイトルに、とても興味を惹かれます。また、会場に足を踏み入れると、非日常的な妖しい雰囲気で支配されていて、とても圧倒されます。

今回の展示は、とにかく気持ち悪い写真で構成したいという想いが強くありました。気持ち悪さや怖さが感じられる光景は、ただ美しいだけよりも確実に印象に残る。それに、改めて写真を見返すと、当初感じたものとは異なる、気持ち悪さや怖さが感じられることもあって。そういうところに面白味を感じています。

――マネキンの写真が目立ちますね。マネキンなのか人なのか、その境界が曖昧な点も興味深いです。

後ろを向いている女性の写真についてよく尋ねられるのですが、実はこれもマネキンです。ちなみに、その左隣の女子高生も、実際は15cmくらいのフィギュア。マネキンを人に間違えられるのは、僕としてはちょっと嬉しいところ(笑) マネキンが持つ、どこか人工的な気持ち悪さが、僕の作品の方向性と合っているのだと思います。

――なぜ撮影される中で、気持ち悪さにこだわるのですか?

それはやっぱり、普通の写真では面白くないから。例えば、綺麗なお花畑を僕が切り取っても、見た人にとっては、ただ綺麗だなで終わってしまう。だったら僕は、気持ち悪いお花畑を撮りたい。美しい景色を切り取ることよりも、人の記憶に残る写真を撮ることに重きを置いているんです。現在師事している瀬戸正人さんからも、「気持ち悪いねと言われるのは、写真家にとっては褒め言葉だよ」とよく言われます。

――途中から展示の印象がガラッと変わる点も印象的です。非日常的な光景から、日常に潜む不気味さへと移行していますね。

そうですね。日々の生活の中で印象に残った場面を切り取ることで、日常に潜む怖さや気味の悪さを表現しています。例えば、同じカラスの写真でも、様々な不気味さがあるんです。一口に不気味と言っても、実はいろいろな不気味さがあるところにも惹かれます。

左から、大阪、東京、山形のカラスたち。東京のカラスは、渋谷警察署の前に佇み、目の前でカメラを向けても逃げるどころかむしろポーズを決めていたとのこと。東京のカラスの肝の据わり具合には驚きです。

ライフワークとして、これからも写真を続けていきたいと意欲的に語られる安達さん。今後は、次のステップとして公募展にも挑戦されるとのことです。
日常と非日常、記憶と忘却。それら相反する部分に、安達さんの写真が内包する一種の狂気さが合わさることで生じる、刺激的な化学反応をぜひ会場で感じてみてください。

ステートメント

【安達 元彦 写真展「 スパークする記憶 」】
会場:PLACE M
会期:2020年7月20日(月) 〜 2020年7月26日(日)
12:00~19:00

安達さんのInstagram
@nozarashinokoto